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国際バカロレア教育と教員養成 未来をつくる教師教育

16面記事

書評

東京学芸大学国際バカロレア教育研究会 編
赤羽 寿夫・佐々木 幸寿・原 健二・藤野 智子 編集代表
先進校の実践を具体的に紹介

 今、なぜIB(国際バカロレア)教育なのか、その理由として

 (1) アイデンティティーをもって主体的に生きる人間の育成のため
 (2) 探究型プログラムとして
 (3) 日本の学校教育の国際的通用性確保のため
 (4) 産業界からのグローバル人材育成への期待
 (5) 次世代社会を担う人材育成の視点

 ―が挙げられるという。
 評者は、高大接続改革時代における海外の大学への留学振興(アウトバウンド)と海外の優秀な若者の受け入れ(インバウンド)の手段、すなわち理由(3)ぐらいにしか考えてこなかったが、(1)~(5)の視点からは特殊な学校の話ではなく、むしろこれは日本の学校教育の未来像を探索する挑戦的試みなのだと受け止めた。
 本書の執筆者の多くが所属する東京学芸大学は附属の国際中等教育学校が日本の国公立学校で初めてIB認定を受け、また教職大学院ではIB教員養成プログラムを開設しているフロントランナーである。ただ、本書では同校の実践紹介にとどまらず、IB教育の基礎概念や理論・哲学、国内の制度的課題について、そして今後の制度普及にとって不可欠なIB教師養成のための章も収められている。
 日本の学習指導要領にはない「言語と文学」「個人と社会」などの独自の学習プログラムについても指導のねらいから最終課題や評価まで具体的に提示されており、読者の多様なニーズにバランス良く対応した入門書である。
(2530円 学文社)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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