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児童福祉の理念の基づいた児童福祉法の改正と教育関係者に求められる対応

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特集 教員の知恵袋

 保育所や保健所など、私たちの身近にある施設も実は児童福祉の施策の一つです。2019年、児童虐待防止対策を強化することを目的に、児童福祉の基盤となる児童福祉法が一部改正されることになりました。

 児童虐待の増加を食い止め、子どもたちの福祉を守るために教育関係者にはどのような対応が求められるのでしょうか。今回は児童福祉の施策や目的、そして児童福祉法の改正について解説します。

児童福祉とは

 児童福祉は、児童福祉法に基づいて満18歳に満たない全ての子どもを対象として行われる施策のことです。

 全ての子どもや家庭だけではなく、特別なニーズを持つ子どもや家庭、さらには子どもを取り巻く地域も対象に含まれ、保育や健全育成をはじめとした施策が行われます。児童福祉施設には、乳児院や児童養護施設、保育所や母子保健センターなどが含まれます。

児童福祉施設とそこで行われる支援

 児童養護施設や保健所といった児童福祉施設で行われる児童支援も児童福祉施策の一環です。対象や目的は施設によって異なりますが、いずれも児童福祉法や児童虐待防止法、母子保健法に則った支援が行われています。

児童福祉の基盤となる児童福祉法

 児童福祉の基盤として位置づけられているのが児童福祉法です。

 児童福祉法は、全ての児童が平等にその生活を保障され、心身ともに健やかに成長するために支援を行うことを明らかにした法律です。また、保護者だけでなく、国や地方公共団体にも児童を健やかに育成する責任があるとしています。

 全ての子どもを対象とした福祉の積極的な増進や健全育成を理念とし、社会のニーズに合わせてこれまでに何度も改正を繰り返してきました。

児童福祉法の一部改正

 2019年6月に児童虐待防止対策の強化を目的として、児童福祉法の一部を改正するための改正法が可決され、2020年4月1日に成立しました。

 改正の背景にあるのは、児童相談所へ寄せられる児童虐待相談の対応件数が年々増加していること。さらに子どもの命が奪われる重大事件が後を絶たないことなどの社会問題です。児童虐待防止対策に係る対応に関しては幼稚園・小学校・中学校・高等学校の学校等の設置者と市町村・児童相談所が連携を強化して対応できるよう、2019年に内閣府から取り組みの徹底が求められていたところでした。

 今回の改正後の取り組みとして、児童の権利擁護や市町村および児童相談所の体制強化、児童相談所の設置促進などが明記されています。なかでも、児童相談所の設置促進については、改正後5年を目途に支援や措置の設置状況や児童虐待の状況を検討し、その結果に基づいて新たに措置を講じるとしています。

出典:文部科学省『児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について』

過去最多の児童虐待相談対応件数

 全国215カ所の児童相談所が2019年度中に対応した児童虐待についての相談件数は193,780件と過去最多を記録しました。増加の要因には心理的虐待に係る対応件数が増加したこと、警察等からの通告が増加したことなどがあげられます。
これらを受け、政府は児童虐待防止対策の抜本的な強化を図ることを決定しました。児童虐待防止の対策には、早期発見・早期対応、学校・教育委員会における児童虐待防止・対応についての体制強化などが含まれます。

 また、緊急時の対応も見直し・強化しなければなりません。児童相談所の支援を受ける家庭が転居した場合の引継ぎルール、子どもの安全確認ができない場合のルールなどを全国ルールとして徹底することが重要です。

出典:厚生労働省『令和元年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数』

教育機関に求められる対応

 増加する児童虐待の防止には、学校や保健所、児童相談所等の連携推進ならびに警察や病院を含む関係機関の連携強化もカギです。

 学校においては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を充実させ、児童が相談しやすい体制を整えることが重要です。

 さらに、教職員や教育委員会の資質を高めること、児童虐待の早期発見や対応方法を身に付けることも欠かせません。たとえば、学校・教育委員会を対象とした児童虐待防止・対応に関するマニュアルの作成、実践的な研修を推進させることも教育機関に求められる対応の一つです。

関連記事:『スクールソーシャルワーカーの役割。児童・生徒の問題解決に必要なこととは』

子どもの権利を守るために求められる関係機関の連携と対策強化

 児童福祉の基盤となる児童福祉法は、18歳未満の全ての児童が平等に生活を保障され愛護されなければならないとして、これまでも社会のニーズとともに変化してきました。

 児童福祉法の法改正が行われた背景にある児童虐待の相談件数の増加や子どもが巻き込まれる事件の深刻化は、保護者や学校はもちろん、国全体で取り組むべき課題といえます。

 学校・教育委員会においては、子どもが相談しやすい環境の整備に加え、研修による教職員の資質向上に努めることが重要です。全ての子どもが持つ生活の保障や愛護される権利を守るためには、教育機関や児童福祉施設、警察など全ての関係機関の連携推進と対策強化が求められます。

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