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バリアフリー法改正で加速化する インクルーシブ整備

12面記事

施設特集

誰もが安心して学び、育つことができる教育環境の構築を目指して

車椅子用トイレや段差解消などを推進
 文部科学省は、学校施設のバリアフリー化を今後25年度末までの5年間で緊急的に加速化させる。これは、昨年5月に改正されたバリアフリー法により、バリアフリー基準適合義務の対象となる施設に公立小中学校等が追加されたことに伴うもの。
 校舎・屋内運動場とも車椅子用トイレを避難所に指定されているすべての学校に整備するほか、スロープ等による段差解消も全学校で改善。加えて、エレベーターも、要配慮児童生徒等が在籍するすべての学校に整備する方針だ。
 学校施設のバリアフリー化は、インクルーシブ教育システムの構築の視点や、災害時には避難所として地域の高齢者や障害者等も含め、不特定多数の方々が利用する視点からも早期に充実させていくことが求められてきた。しかし、昨年5月時点の調査によれば、配慮が必要な児童生徒が在籍する学校の車椅子用トイレ整備率は8割弱、スロープ等による段差解消率は7~8割、エレベーターは4割ほど。また、屋内運動場もそれぞれ4割弱、6~8割、6割ほどで、新設・改築工事後の学校以外はいまだ整備が遅れている。すなわち、多様な児童生徒や教職員、保護者、地域の方々が円滑に、かつ安全・安心して利用する上で十分に整備されているとは言い難い状況だ。

自治体の整備計画を推進するため、国庫補助率を引き上げ
 一方、バリアフリー化に関する整備の策定計画や方針がある学校設置者も14・9%(270設置者/1810設置者)に留まっており、22年度までの整備予定を見ても進捗スピードがそれほど望めない状況下にある。そこで、バリアフリー化工事への補助拡充として、今年度からは国庫補助率をこれまでの3分の1から2分の1に引き上げ、各自治体の整備を加速化する意向だ。

背景には支援や医療ケアが必要な子どもの増加も
 こうした学校施設のバリアフリー化を急ぐ背景には、特別支援学級に在籍する児童生徒や通級指導を受ける児童生徒の数は10年間で2倍に増加しており、小中学校校等の約8割に特別支援学級が設置されていること。医療的ケアが日常的に必要な児童生徒も5年間で1・4倍になっていることも含まれる。また、障害者の雇用機会を促進するためにも、障害のある教職員が働きやすい環境整備を進めていく必要があるのだ。
 加えて、災害時に避難所となる屋内運動場では、校門・駐車場からそこにいたるまでの経路に段差等が生じている学校もあり、速やかに改善する必要があること。また、高齢者や妊婦など幅広い人たちが利用するため、トイレの洋式化やマンホールトイレの整備も進められているが、いずれの設備も車椅子利用に対応することが求められている。
 さらに、エレベーターの設置も、近年多発している水害からの避難を考えると上階への移動等が必要な場合があり、その際もすべての人が安全に移動できるよう配慮する必要があるからだ。
 学校は、社会に出る準備段階として学びを深める場であり、障害、性別、国籍、経済上の理由などにかかわらず、「共に育つ」ことを基本理念としている。こうした整備を通じて、子どもがふだんの生活環境の中から体験し、その意味や機能を理解することは大きな意義を持つものと考えられる。

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