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高等学校国語科授業の探究 短歌の創作・鑑賞指導を求めて

16面記事

書評

青木 雅一 著
「読みの交流」実現への試行錯誤

 短歌に焦点を当て、昭和61年から取り組んだ実践を基にして平成14年まで世に問うてきた論文を一冊にまとめた。昨年、還暦を迎えた著者の20代から30代の時の実践研究の足跡である。
 きっかけは当時の新設科目「国語表現」の創設。表現指導の一環として短歌の創作指導を取り入れた。
 第I部「短歌の創作指導を求めて」は2年生を対象に教科書にある近代短歌の鑑賞後、生徒の創作短歌を作品集として印刷し、相互評価をする出発点となった授業を主に取り上げた。以後、創作短歌を基軸にして、多様なアプローチを試み「他者理解」「読みの交流」を併せて実現していく。
 「否定的鑑賞文」や「万葉」歌人になりきって書く日記などの実践を「短歌の鑑賞指導を求めて」(第II部)に、年間を通した短歌創作から鑑賞、読みの世界を広げたり、帯単元での試みなどを「短歌の創作・鑑賞指導を求めて」(第III部)に、小説教材の読みを深めるための実践や提案を「短歌創作指導の可能性」(第IV部)に、それぞれ収めた。
 たくさんの生徒の作品や感想、鑑賞文が掲載され、飽きることがない。時々の計画意図と結果のずれを課題に改善しようとする姿勢も刺激になる。いわば主体的・対話的な深い学びの追究。長年の試行錯誤が輝きを放つ時代を迎えているのではないか。
(6050円 溪水社)
(矢)

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