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フランスのバカロレアにみる 論述型大学入試に向けた思考力・表現力の育成

12面記事

書評

細尾 萌子・夏目 達也・大場 淳 編著
全教科で論理的に書くことに注力

 今年1月の大学入学共通テストで導入予定とされた国語と数学の「記述式問題」が採点基準や採点者を巡る公平性・公正性の観点から見送られたことは記憶に新しい。他方、「思考力・(判断力)・表現力」の育成・評価を目的として論述式で行われるフランスのバカロレア〔注=国際バカロレア(IB)とは全く別の大学入学資格試験〕は、どのような試験問題が誰によって出題され、誰が、どのように採点(調整)しているのだろうか。フランスの中等教育ではバカロレアに向けてどのような育成がなされているのだろうか。
 こうした幾つも湧き上がる疑問に対し、本書は丁寧に応答してくれる。ここでは高校教師の役割の大きさ(信頼を担保する教員養成等)を指摘するにとどめ、本書をご覧いただきたい。また、高大の非連続性、乖離をつなぐバカロレア試験を評価するに当たり、中等教育の性格付け、課程主義の採用など他の要素や背景も併せて考える必要があり、単純に美化し、導入を推奨しているものではもちろんない。
 特に「書く」ことを巡る日仏の意識の違いが大きく、制度を輸入すれば済むものではないことを痛感する。個人の経験や感情を書かせる日本に対し、「定立」「反立」「統合」といった論理展開を重視するフランスでは、全教科を通じて書き手の考えを適切な根拠を持って表現することに力が注がれていることに注目したい。
(4950円 ミネルヴァ書房)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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