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モラルを育む<理想>の力 人はいかにして道徳的に生きられるのか

16面記事

書評

ウィリアム・デイモン、アン・コルビー 著
渡辺 弥生・山岸 明子・渡邉 晶子 訳
著名な人物の生き方から探究

 日本の学校でこれまで行われてきた、そして今も行われている道徳が、本書を読むと、これまでの捉え方がかなり狭義で、貧弱に感じたことをまず正直に書いておきたい。
 「人はいかにして道徳的に生きられるのか」のサブタイトルに惹かれ読み始めた。道徳的に生きにくいのが人間である。ならばどうする。読み進める中で、これまで曖昧にしてきた内容が解説を添えて書かれているとともに無理なく初心者でも納得できる。
 とかく訳本は、どこかぎくしゃくするものだが、それを全く感じさせない、それでいて読みやすく教材としても十分活用できる構成になっている。特に指摘したいのは、明快さである。この明快さが道徳では煙に巻くように曖昧にされやすい。現実の諸課題にコミットできないで、意味があるのかと私は問い続けてきたが歯が立たなかった。
 貫かれている三つの重要な美徳「誠実」「謙虚」そして「信仰・信条」を解説し、「謙虚さ」を、自己中心的にならず過度な自尊心にもとらわれない姿勢としている。七章構成、特に著名な人物を通して、彼らを「道徳的な生き方」に駆り立てたものは何だったのかを追究する第二章から読むと面白い。ウィリアム・デイモン、アン・コルビーの卓越性に加えて、見事な訳文により明快さが際立っている。同様の書とは格が違う。
(2970円 北大路書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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