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学校の働き方改革を支援 勤務時間外の電話対応をゼロに(後編)

5面記事

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クラウド型電話転送サービス「転送録」

 学校の働き方改革の施策として、勤務時間外における電話対応の改善が注目されている。その際に課題になるのは、留守番電話と緊急連絡先の使い分けや、確実な受信体制づくり、また導入までの整備費用などがあげられる。これらのハードルを解消するため「クラウド型電話転送サービス」が注目を集めている。株式会社ワイドテック(本社・東京都千代田区)の「転送録」は、留守番電話や、電話の自動転送、音声ガイダンスの切り替えなど、自治体や学校現場の状況に応じてカスタムできるシステムをクラウド型で提供している。長野県小諸市教育委員会では市内の小中学校に「転送録」を導入し、時間外の電話対応が大きく改善された。前半に引き続き、同教委が目指す学校の働き方改革に合致した「転送録」の活用法を紹介する。今回は導入後の運用方法と導入の効果、教員や保護者の反応についてレポートする。

労働時間の短縮が急務
 長野県の小諸市教育委員会では、教員の時間外労働を減らす工夫の一環として、「転送録」を2020年6月から小中学校5校で導入し、通常勤務時間外の電話対応の劇的な改善を実現している。
 2019年に文科省から通知された「学校における働き方改革に関する取組の徹底について」を受け、同教育委員会でもさまざまな課題や施策が議論された。そのなかでも取り組み次第で比較的早く効果がでるのではと期待されたのが、通常勤務時間外での電話対応業務の改善だったという。
 業務時間外の電話を音声ガイダンスに切り替える電話転送サービスの導入を考えたが、開校してから長い歴史がある学校が多い同市では設備が古く、電話会社の転送設備に対応できない学校がほとんどだった。そこで、教育長自ら電話転送サービスの調査を行い、いくつかの候補の中から現在の設備にも対応できるワイドテック社の「転送録」を検討したという。
 「転送録」はクラウドを使ったサービスであるため、インターネット環境とパソコンがあれば速やかに導入できる。学校が専用設備を購入し設置工事することもないので、学校の統廃合にも柔軟に対応できる点がメリットだ。また、電話やメールでのサポートに対応していること、公式ホームページが分かりやすく、サービスの特徴がすぐに理解できたことなどが導入の決め手になった。

テスト期間を経て導入
 本格的な運用に先立ち、20年2月から1校でテスト導入を行った。現場からは好評で、新型コロナ感染症予防のための臨時休校期間後の6月から本格導入を始めた。
 導入したすべての学校では、現在、平日18時から翌朝7時30分までにかかってきた電話は、音声ガイダンスを流し、緊急連絡は小諸市役所の宿直室にかけ直すよう案内している。宿直室に保護者から電話がかかってくると、宿直室から該当する学校の教頭に連絡が入り、折り返し教頭から保護者にかけ直す仕組みだ。

業務負担が大幅軽減
 「転送録」利用前は、残業中の教員が電話対応していたため、時間外労働は長時間化する悪循環が生じていた。電話の内容によっては教頭が対応するため、管理職の負担も大きく残業も多かった。それらが「転送録」の導入で改善されたことで、教員の業務負担が大幅に減り、現場からは「翌日の授業準備がはかどる」「残業時間が目に見えて減った」と、喜びの声が上がっている。
 同市では「転送録」の多彩な機能から何を選ぶか検討を重ね、最終的には時間外の留守番電話機能は付けなかった。メッセージを残す形にすると、教員の誰かが録音を聞いて対応する業務負担が増え、いつまでも時間外労働が軽減できない、と考えたためだ。
 市役所宿直室の番号を案内して保護者の連絡を集約し、そこから各校の教頭が保護者に連絡を入れれば、本当に必要な緊急連絡対応は確実にできる。市役所を経由することで、緊急性の低い連絡を減らすことにもつながった。
 時間外に流れる音声ガイダンスへの切り替えは、市教育委員会が事前にまとめてWebでスケジュール登録をしている。各校の時間外や休校の予定はあらかじめわかっているので、学校ごとに担当者が手動で切り替えるより、教育委員会で一括して「転送開始・停止」を登録したほうが効率が良いからだ。

保護者の理解も促進
 こうした電話対応の運用フローは、何度も検討を重ねたうえで決定したという。熟考の末、シンプルなフローにしたことで、長年の懸案事項だった時間外の電話対応が劇的に改善された好事例と言えるだろう。
 保護者の理解もスムーズで「なぜ電話がつながらない」といった意見はないという。「むしろ、『不要な電話はなるべくしないようにしよう』という意識改革につながっている。教員のワーク・ライフ・バランスを整えるのも、教育委員会の大切な役目」と、同教委学校教育課の担当者(当時)は「転送録」の効果を実感している。
 ワイドテック社では、現在、『時間外電話対応ゼロ』プランのデモダイヤルを用意している。音声ガイダンスの試聴や電話転送切替のトライアルも可能。留守番電話でのメッセージ預かりも試すことができる。(通話料金別途。デモのため電話転送は行わない)

 問い合わせ=株式会社ワイドテック
 Tel03・5829・4886
 https://www.10so6.com/work-style-reform

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