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一刀両断 実践者の視点から【第37回】

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「特別支援」と教師の犠牲

 《学校で人工呼吸器装着の生徒が心肺停止となり意識不明重体に 第三者委立ち上げ調査へ》(MBSニュース)という見出しのニュースが目を引いた。
 看護員が特別に配置されていることが分かる記事である。生命と安全を第一義にするのなら、そうした施設で学業をする事が必要であるが、通常の施設しかない学校へ通うとなると、特別な措置が必要になる。
 この生徒がいる教室は、2階以上とすることはできず、教室移動はストレッチャーを使うため、休憩時間をオーバーしてしまうことになる。学習を受ける権利が危うくなるものの言葉にできない事が起きてしまう。
 こうした状況の児童生徒に普通学校へ通う権利はある。ただし、この子のためにエレベーターを設置したり昇降機をと要望されるが、限られた教育予算の中では、その希望に応じられるとは限らない。学級担任の配置についても、危険や手間、苦情を受ける可能性を承知で引き受ける教員は少ない。
 特別支援学校でも困難な対応なのに、親の希望ばかりを優先させる在り方が正しいとするのなら、それにより腰を悪くしたり疲弊したりする教師の犠牲は黙認されてよいのだろうか。教師は聖職者ではあるだろうが、犠牲者にしてはならない。この曖昧さがこれまで何も改善されてはいない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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