日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

インクルーシブ授業で学級づくりという発想

18面記事

書評

丹野 清彦・関口 武 著
違いを認め、共に成長する実践を明示

 「大げさに考えると、子どもたちはそれぞれの国からやってきている、いわば大使です。彼らを交わらせ、遊ばせることで国際交流が起きます」。本書にはこんな一文がある。遊びの重要性を説いているものなのだが、家庭の背景、発達の仕方、固有の性格など、さまざまな違いのある子どもたちが教室にはあふれている。この「大使」たちが違いを認め合って授業に加わり、「大使」たちの力によって学級を成長させていく。その根本に「インクルーシブ」という言葉があるのだろう。
 さまざまな子どもたちとの出会いの中で教師が子どもをどう見つめ、向き合うのかを「多様性を認める発想、アタッチメント」(part1)で例示し、授業を共につくっていく中で子どもの力や、学級としての成長を引き出す「授業のここを変えよう、エンパワメント」(part2)では各教科での具体を提案する。
 二つのpartを踏まえて「ココ変え」として考えるべきポイントを明確にした「学級がまとまる授業、壊れる授業」(part3)で構成した。
 一人一人の子どもの言動の背景にあるものは何かを絶えず模索し、グループの力を借りながら居場所をつくる。発達の過程でこぼれ落としたものを、授業の中で獲得させていくように映る実践のどこにヒントを見つけるかは読者次第である。
(1980円 クリエイツかもがわ)
(矢)

書評

連載