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一刀両断 実践者の視点から【第38回】

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中学生の力、防災に生かすには

 《村の安全、生徒が守る 避難所運営やポスター作成 長生中に防災部発足》という見出しの記事が千葉日報に掲載された。やっとここまで来たかと嬉しく思えた。こうした取り組みの有効性はかなり前から明らかになっていたが、遅々たる動きで止まっていた。教育現場には、即行即止ができないもどかしさがある。
 長生村立中学校で発足した防災部は、全校生徒の2割を越える加入があるという。卒業生がこの中学校に進む小学校3校には、すでに同様の部が作られているとのことで驚く。長生村の意識の高さが現れている。
 中学生は即戦力として活躍してくれる。その実績は3.11でも証明されている。高校となると遠方へ通う生徒が多くなり、地元からの進学は少なくなる。それに比べて義務教育段階の児童・生徒は、徒歩または自転車の範囲にある学校に通うことが多い。中学生の体力と理解力と感性の豊かさは申し分ない域にある。よって配慮もできるし、自己判断も出来るのだから下手な大人よりも機動力があることは確かだろう。
 ただし、その実態を理解して形にするのには教師の意識と仕掛けが必要になる。こうした発想があっても形にして、組織して、動かすまでにたどり着く人は、極めてまれだからである。
 長生村の仕掛人達に、是非会ってみたいものだ。そしてこの動きが全国へと普及してほしいと願わずにはいられない。それは結果として自己肯定感を高め、地域へと貢献する事のできる青年を確実に育成することになるからである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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