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ICT支援員とは? 配置の必要性とポイント

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特集 教員の知恵袋

 近年、ICTを活用した教育が促進されるなか、文部科学省は学校におけるICT支援員の配置を進めようとしています。

 ICT支援員は、子どもたちのみならず、指導者の立場にある教員をサポートする意味でも、これからの学校教育に不可欠な存在といわれています。今回はICT支援員が必要とされる理由や現在の配置状況、そして配置のポイントについて解説します。

ICT支援員とは

 ICT支援員とは、授業や校内研修、環境整備、校務支援など、学校でのICT活用を支援する外部人材のことです。

【ICT支援員の主な業務】
・機器・ソフトウェアの設定や簡単なメンテナンス
・機器・ソフトウェア、教材などの紹介と活用の助言
・情報モラルに関する教材や事例などの紹介と活用の助言
・デジタル教材の作成の支援

 主に、授業や校内研修で使用するICT機器・ソフトウェアの設定や操作方法を説明したり、デジタル教材の作成に関わったりといった業務を行います。学校でのICT環境の整備状況やICTを活用した教員の指導力は自治体によって異なるため、ICT支援員に求められる能力も多様化しているのが現状です。

なぜICT支援員が必要とされているのか

 新学習指導要領では、子どもたちが“どのように学ぶか”が求められています。その手段の一つとして期待されているのが、ICTの活用です。

 校内で使用するICT機器が増えることで、機器の設置や操作の習得、ICTを活用した授業の改善などの業務が発生します。そして、これらの業務が教員の負担になっているという現状があります。

 教員のなかには、ICTを活用した指導に自信がないという人も少なくありません。教員にかかる負担を軽減するとともに、ICTを活用した指導力を向上するために、ICT支援員が必要とされています。

ICT支援員を配置する際のポイント

 文部科学省では、2018~2022年度の5カ年計画で、ICT支援員を4校に1人配置することを目標としています。優れたICT支援員を配置するには、育成に加え、各自治体がICT支援員に求める業務やスキルを明確にすることが重要です。

(1)業務の明確化

 1つ目のポイントは業務の明確化です。ヒアリング調査や企業ワーキンググループの意見では、「ICT支援員が行うべき業務と教員が行うべき業務がうまく分担できていない」との声がありました。
 ICT支援員を配置する際は、ICT支援員と教員が担う業務を明確化し、それぞれを区別化することが大切です。

【ICT支援員が担うべき業務の例】
・授業関連:ICT機器の準備・片付け
・校務関連:校務支援システムの操作支援
・環境整備関連:障害トラブル時の切り分け・トラブル発生時の対応
・校内研修関連:校内研修の準備

 これらに対して、教員が担うべき業務には、学習指導や学級経営、生徒指導、特別支援教育、専科指導、いじめや道徳対応の強化などがあげられます。ICT支援員の業務は“指導に関連しない”点が教員の業務との違いです。

(2)スキル標準の策定

 2つ目はスキル標準の策定です。ICT支援員に求めるスキルは、業務内容と同樣に各自治体で異なります。ICT支援員のスキル標準は、スキルレベル1(基本)とスキルレベル2(応用)に分けられます。

スキルレベル1(基本)
・ICT機器を活用した授業案作成を支援できる
・ICT機器の適切な準備・片付けができる

スキルレベル2(応用)
・ICT機器を活用した授業案の作成に関して他校・他自治体の先進的事例を踏まえて助言できる
・児童生徒の発達段階に応じてICT機器の操作を支援できる

 ICT支援員に求められるスキル標準は、業務内容によっても異なります。そのため、先にICT支援員が担う業務の明確化を行うことが欠かせません。

出典:文部科学省『新学習指導要領に則した学びを実現するためにICT支援員の配置を』

ICT支援員の配置状況と課題

 文部科学省の調査研究によれば、2021年3月時点でICT支援員を「配置済み」と回答したのは、都道府県・市区町村等ともに全体の43%と半分未満にとどまっています。

 一方、現段階でICT支援員を配置していない教育委員会のうち、「ICT支援員の活用を検討したことがある」と回答した教育委員会は80%を越えています。ICT支援員の活用を検討する教育委員会が過半数を越えるなか、予算の確保や求める人材の発掘が困難であること、契約に係る事務手続きが煩雑であることなどを課題としてあげる回答が多く見られました。

 この結果から、これらの課題を解消することができれば、ICT支援員の配置・活用が全国的に拡大していくと予想できます。

これからの学校教育に欠かせないICT支援員

 新学習指導要領で子どもたちが“どのように学ぶか”が求められるなか、これからの学校教育を支えるためにICT支援員は欠かせない存在であるといえます。

 全国のICT支援員の配置状況を見ると、現時点で配置している都道府県・市区町村は全体の半分未満とまだまだ浸透しているとはいえない状況です。そのうえ、配置・活用を実現するうえでの課題も見られます。

 ICT支援員の配置にあたっては、各自治体が求める業務やスキル標準を明確化すること、ならびに、教員とICT支援員が協働してICTを活用した指導力を向上させていくことが重要です。

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