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校則の見直しが求められる理由と取り組み事例

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特集 教員の知恵袋

 2021年6月、文部科学省は校則が子どもの実情や社会常識に則ったものであるかを絶えず、見直すことを求める通知を提出しました。この背景には、ブラック校則という言葉で表されるような不適切な校則、合理的とはいえないような決まりごとが散見される事実があります。

 そこで、今回は校則の見直しが求められる理由をはじめ、どのように見直しを行えばよいのか、ブラック校則の例や取り組み事例を交えて解説します。

校則の見直しが必要な理由

 昨今、小中高等学校における児童・生徒の人権侵害に当たるような校則や合理性のない校則が報道機関によって数多く取り上げられ、注目されています。

 2019年8月23日にはNPO法人の代表らが『ブラック校則をなくそう!プロジェクト』を発足。校則の見直しを求める6万人を超える署名を文部科学省へ提出しました。

 このような市民からの声のほか、新しい時代を生き抜く人材を育成する意味でも校則の見直しが必要です。

出典:「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト『理不尽な校則をなくしてほしい。6万人を超える子どもや大人の願いが文科省に託された。6万人を超える署名が、文部科学省に提出された。(BuzzFeedNews 2019/08/23)』

合理的ではないルールが定められている校則がある

 そもそも、校則とは学校が教育目的を達成するために必要であり、合理的な範囲内において定められるものです。一方、ブラック校則と呼ばれる不適切な校則の多くは、合理的な説明ができないであろうルールが定められています。

<不適切な校則の例>
・運動中の水飲み禁止
・ポニーテール禁止
・整髪料の使用禁止
・シャープペンシルの使用禁止
・マフラーの使用禁止
・下着の色は白色・淡色・無地
・地毛が茶色でも黒髪に染めなければならない

これからの時代に求められる人材の育成にそぐわない

 不適切な校則に関しては、衆議院議員からも見直しを求める声があがっています。国会への質問主意書では、不適切な校則を放置する教育環境では、文部科学省が示す“これからの時代に求められる資質・能力”を育むことが難しいのではないかとの意見も見られます。

 なお、“これからの時代に求められる資質・能力”として、文部科学省の新しい学習指導要領が目指す姿では以下のように示されています。

“複雑で変化の激しい社会の中では、固有の組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要となる。”

引用元:『2.新しい学習指導要領等が目指す姿 変化の中に生きる社会的存在として』

 これからの時代を生きる児童・生徒の声を無視して不適切な校則を適用し続けることは、「自分の意見では学校は変わらない」との考えにつながるおそれがあること。さらに、そこから「自分が投票したところで社会は変わらない」という政治参加に反する考えにつながるのではないかという若者からの指摘もあります。

出典:文部科学省『2.新しい学習指導要領等が目指す姿』

校則見直しに対する取り組みの事例

 見直しを求める声が高まる不適切な校則ですが、全国の教育委員会や公立中学校・高等学校では、校則の見直しに対する取り組みを行っているところもあります。
 いずれも、校則に関する実態調査を行ったのちに、生徒やPTAの意見を取り入れるという方法で見直しを進めています。以下、長崎県教育委員会と公立高等学校で行われた校則の見直しについての事例を紹介します。

長崎県教育委員会

 長崎県教育委員会は、2020年から2021年にかけて校則内容の実態調査を実施。公立中学校、県立高等学校のうち、下着の色を白としている学校は全体の半数を超える58%、138校に上ることが分かりました。

 この結果を受け、2021年3月に長崎県教育委員会は県立学校に対して人権に配慮した内容となっているかとの観点等から校則の見直しを行うことを通知しました。

公立高等学校

 公立高等学校の生徒・保護者・地域に対してヒアリングを実施。生徒会やPTA会議、学校評議員会から聴取した見直しが必要な事項を踏まえて校則を改定しました。
 
 校則の改定に伴い、生徒・保護者・地域の校則に関する意識を高めることと学校における校則見直しの促進を図ることを狙い、学校のホームページに校則を掲載するという取り組みも行われています。

 さらに、公立高等学校への入学希望者である中学生を対象とした説明会を実施。校則内容を説明し、生徒と保護者の共通理解を目指しています。

求められる校則の見直しと保護者・地域を巻き込んだ共通理解

 報道によって不適切な校則の実態を目にしたり耳にしたりする機会が増すなか、時代の要請や児童・生徒の状況に合わせて不適切な校則の見直しを求める声も高まっています。

 児童・生徒が新しい時代を生き抜くための資質・能力を育むことを考慮すれば、規則を守らせることのみに注力した指導にならないよう注意しなければならないことは言うまでもありません。各学校に残る非合理的な校則を見直し、改定につなげることが重要です。

 校則制定の権限を持つ校長の意見だけではなく、児童・生徒や保護者、地域の意見・考えを踏まえたうえで見直しや改定を行い、校則内容の共通理解を図ることが求められます。

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