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一刀両断 実践者の視点から【第53回】

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論説・コラム

 《「泣いてる子に気をとられ」確認の手順守らず 園児死亡》(朝日新聞デジタル)という見出しの辛すぎる記事が出た。まず違和感を持ったのは園長が運転している事である。
 管理職は全体を把握するものであり、運転業務をなぜしていたのかという背景を確認したい。一般的にはその要員を確保できない状況にあったことが想定される。
 ここで、過失は徹底して責められるべきだろうが、違う視点から考えてみたい。それはこうした乳幼児を相手とする職業の人の育成や労働対価の低さである。
 大学の教授陣の給与の数割程度しか与えられておらず、乳幼児を扱うゆえに、求められる専門性や体力や忍耐力は並々ならぬものがある。潤沢な手立てをしてこなかった、すなわち、幼児教育を軽視してきた我が国の罪が隠れている。
 何故なら、このような事件には至らなかったものの、未遂は全国で毎日のように起きているからである。こうした過失致死の事案は、一時期は国民にショックを与えるが、やがては風化してしまう。
 本当に繰り返さないようにするのならば、制度を見直し、まずは給与を大学教授並みにしてはどうだろうか。あのダイアナ妃は幼稚園の先生をされていたし、バイデン大統領の妻は現職の教員である。
 日本の幼児教育を見下げた輩に未来は必ず天罰を下すことになる日が必ず来る。世界でもトップクラスの青年自殺率が物語っている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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