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一刀両断 実践者の視点から【第64回】

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論説・コラム

喜怒哀楽と報道

 《妊婦コロナ感染で赤ちゃん死亡》というニュースを号泣しながら読んだアナウンサーがいると報じられている。新鮮味と人間味を感じた。
 人の親として、その辛さを同苦した姿に感じられたからである。人の喜怒哀楽は豊かなものであって欲しい。ただし、正確に伝えるとなると、感情はある程度控えなければ視聴者の判断に影響を与えることになる。
 私達教師も何かを伝えるときに自己の感情を重ねることで結果として誘導してしまうことになる。いじめへの対応など時にその感情を敢えて露にすべき時と、圧し殺さねばならない時がある。人ゆえに感情を抑えられないものもある。
 他国の報道の中には、言葉遣いや表情に違和感を持つ時がある。そうした国の友人に違和感がまったくないものの、メディアや政治となると明らかに異なる。意図的に操作された報道になっているのである。政治における覇権意識から出される言葉や行動との格差を見定めて冷静に判断する必要がある。
 身近な人間関係は作るものであるが、報道やメディアは意図的に作られたものであるという認識を持って受け止めねばならない。
 ワクチンを打つか打たないか。患者を受け入れるか断るか。今回の妊産婦対応で救急隊が連絡をする姿が目に浮かぶ。搬送先が見つからないで手遅れになるケースはかなり多いだろう。医師も医院もピンキリで、この時期に至っても利益を先にしている輩もいる。
 人の悲しみを我が事にする学びを発達段階に合わせてしっかりと考え議論させる教育が必要である。しかし、それを具体化する教育課程や授業内容になってはいない。
 身近な事件や事故や報道から個々の喜怒哀楽を豊かに引出し、自らの足りなさを自覚したタイミングで、教え伝え考えさせ論議させる求める学びを仕掛けねば、体得し行動までも促せる授業とはならない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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