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withコロナ時代の新しい学校づくり 危機から学びを生み出す現場の知恵

18面記事

書評

村川 雅弘 編著
難局での気付き、工夫の数々

 本書は事例編と理論編で構成されているため、「即実践に役立つ」内容になっていることをまず強調したい。事例編では、行政と共に文科省の研究指定校7校がカリキュラム・マネジメント研究の経験を生かして難局を乗り越えていることが分かる。小・中・高の各事例も優れ、マネジメント力を発揮してコロナ禍に立ち向かい、その挑戦の中で何に気付き発見したのかが書かれている。
 中でも、第4章の「コロナ禍をコロナ福に―全教職員が主体的・協働的に取り組む感染回避と学習保障」は家庭学習と連動させた短縮授業の取り組みなどを紹介し、実践者ならではの示唆が多く共感できる。また第8章の「カリキュラム・マネジメントでポジティブに、今、できることを考える」では「嘆くばかりでは何も始まらない」の項の中学3年生の作文に力強い未来を感じることができた。
 巻末の「現場の知恵を生かすwithコロナの学校づくり・授業づくり」の座談会から読まれることをお勧めしたい。なぜなら、かなりの不安が解消されるからである。
 何よりも編著者の序章に感銘を受けた。「当たり前が当たり前でなくなった時、人は深くかつ広く思考し、新たな視点を持つ。今回身に付けた複眼的思考を活かし、新たな教育を共に切り拓いていきたい」という意思が本書を貫き、危機から学びを生み出す現場の知恵が豊富な図や写真と共にあふれ出てくる救済の名著と評したい。
(2750円 ぎょうせい)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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