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学力格差への処方箋[分析]全国学力・学習状況調査

16面記事

書評

耳塚 寛明・浜野 隆・冨士原 紀絵 編著
成果上げる学校の取り組み分析

 本年度で15年目を迎えた全国学力・学習状況調査。その実施を受け、各校はじめ関係者は調査結果を分析して学力実態を捉え、授業改善に生かしたり教育環境改善を図ったりして活用されているだろう。当然のことながら教育現場では子どもたちが解答した調査結果を重視する。しかし、本書は本調査の一環として実施した保護者対象の質問紙による調査結果を詳細に分析し、家庭状況と学力の関係をつぶさに専門的に研究された。学力格差は教育問題ではなく社会問題という言葉が印象的。
 保護者への質問は多岐にわたる。家庭の蔵書数、年間所得、学歴、PTA活動の状況等、踏み込んだ内容も。そこから学力格差の状況とその規定要因を分析したのは初めてのことであり、唯一の調査研究だ。この分析結果を有効活用することは意義深い。
 特に学力格差を克服している学校や成果を上げつつある学校の取り組みを調査されている点に注目。具体的な内容は、ぜひ本書を手に取っていただきたい。もちろん、学力格差克服の処方箋は万能策ではなく、著者は、各校の置かれた独自の文脈に即し目の前の子どもの様子を見ながら「現地化」していくことが肝要という。それでも、全国的に展開した調査をこれほどまでに分析された本書から学ぶことは数知れず。有効な支援が見え、きっと各校それぞれの処方箋の創造に結び付くはず。
(3190円 勁草書房)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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