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日米比較を通して考えるこれからの生徒指導

16面記事

書評

なぜ日本の教師は生徒指導で疲弊してしまうのか
片山 紀子・藤平 敦・宮古 紀宏 著
多様性と包摂の時代の在り方検討

 異なる人種や出自の多様な人々から成り立つ国アメリカ。学校において髪形や服装などを一律に規制することはない。学校の規則は、社会の規範意識や倫理観を身に付けさせるためのものである。その規則はスチューデント・ハンドブックに記され、保護者も子どももそれに同意した上で入学する。規則に反した行動(例えば、いじめや暴力など)への対応は、担任教師ではなく、常勤のスクールカウンセラーなどが行う。規則からの逸脱は、懲戒処分の対象となる。ゼロ・トレランスの背後には、アカウンタビリティー(説明責任)の思想が位置付いているのだ。
 本書を読むと、日本とアメリカの生徒指導には、さまざまな違いがあることがよく分かる。両国の歴史や社会、文化などの差異が、そうした差異の根底にあるのだ。
 著者たちが指摘しているように、アメリカの生徒指導をそのまま日本の教育に当てはめたとしても、十分な教育的効果を上げることは期待できない。では、なぜ日米の生徒指導の比較研究を行うのか。それは、わが国の生徒指導を相対化して捉え、当たり前のこととされている生徒指導の問題点を認識するためなのである。
 教員採用試験の受験者が次第に減少し、ブラックな職業だともいわれる日本の教師。その仕事ぶりを見直し、多様性と包摂の時代における生徒指導の在り方を考える上で、本書は多くのことを教えてくれる。
(2420円 学事出版)
(都筑 学・中央大学教授)

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