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ルーブリックで変わる美術鑑賞学習

14面記事

書評

新関 伸也・松岡 宏明 編著
能動的に作品と向き合う学び

 美術教育は、表現と鑑賞の二つから成り立っている。造形物を自分で新たに生み出す表現活動。芸術作品を見て味わう鑑賞活動。両者は、表裏一体である。しかし、従来の学校教育では、表現に重点が置かれ、ともすれば鑑賞は脇に追いやられてきた。
 本書は、そうした鑑賞活動を授業の中心に据え、ルーブリックによる可視化を試みたものである。鑑賞学習ルーブリックは、観点として、

 ・見方・感じ方
 ・作品の主題
 ・造形要素とその効果
 ・作品にまつわる知識
 ・生き方

 ―の五つ、レベルとして

 (1) 関心をもつ
 (2) 指摘する
 (3) 説明する
 (4) 批評する

 ―の四つ、その2次元マトリックスから構成されている。授業者は、この鑑賞学習ルーブリックを使うことで、学習者の学校種・学年や学習の進度に合わせて、授業の目標(ねらい)を設定することができるのだ。
 作品を見ることは能動的な行為である。授業者からの問い掛けに応じて、学習者は作品中の形・色、構成・配置などから、さまざまなことに気付いていく。それらの発表を通じて、他者の気付きに触れ、多様な見方で作品と向き合っていくことができるのである。
 本書は、鑑賞授業を具体的、かつ反省的に展開する上で、ルーブリックが果たす役割の重要性を示している。掲載されている12の学習指導モデルも大いに参考になるだろう。
(2200円 三元社)
(都筑 学・中央大学教授)

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