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第2回高校生作文コンクール 「学校賞」受賞校に聞く

9面記事

企画特集

天草高校に贈呈された10万円分の副賞(一部)を手にする野口学年主任。同校の希望する製品が送られた

熊本県立天草高等学校

 日本大学「高校生作文コンクール」は、高校生が自分の将来の生き方や進路を模索し、自発的なキャリア形成意識の醸成と学習意識の向上を願い、日本大学が日本教育新聞社と共同で企画・主催するコンクール。現在、第3回の応募が始まっている。昨年度、学年全体でコンクールに応募し、学習意欲の向上につなげ第2回の「学校賞」を受賞した熊本県立天草高校に応募のきっかけや成果について聞いた。

論理的に伝える力高まる

休業明けの今の気持ちを表現
 2020年度、新型コロナによる臨時休業で全国の学校が例年とは異なる新学期を迎えた。熊本県立天草高校(馬場純二校長、生徒数602名=現在)は5月から分散授業を開始、シラバスの変更や感染対策に追われながらの1学期だった。生徒たちには意欲を失わず、一度しかない高校生活を楽しく元気に過ごしてほしい―。そんな思いから国語科では1年生を対象に同コンクールに応募することを決めた。
 「コンクールの応募ポスターを見て『今を生き抜く力』というテーマに魅力を感じた。休業を経験した生徒たちに合っていた」と、振り返るのは国語科の坂口教諭だ。学校再開後、どのような気持ちでいるのか、どうしたいと思っているのか、今の思いを作文にすることで休業中に失われたものを取り戻し、学校生活に希望を持てるのではと考えたのだ。
 国語科の当初の年間指導計画にはないものだったが、必要性を感じ急きょ1学期末の定期考査後の4、5コマを活用して学年全体で取り組んだ。

中学の学びを生かし構成
 コンクールの応募形式は、「専用のWordのフォーマットに作品を入力し、プリントアウトして送付」。同校では入力前に、オリジナルの下書きシートを用意し、生徒が手書きで作文の構成を考えられるように支援した。坂口教諭らのアドバイスを受けた後に、生徒はパソコンを利用して入力を行った。
 作文に取り組む生徒たちの集中力は高く、放課後に残って仕上げる生徒もいたほど。中学校までに学習した環境や自然などから題材を取り上げ、インターネットや文献で調べたことを盛り込みながら、自分の考えを述べる作品が多かった。
 コロナで不便を強いられる中「鬱屈した気持ちを書いてくると思ったが、それよりも学びたい、という高い意欲、前向きな気持ちが感じ取れて驚いた」(坂口教諭)。学校として169点もの作品を応募したことが評価され、今回の受賞につながった。

探究やキャリア教育にも活用

探究的な学びの準備に
 学年で応募した意義は国語科以外にもあった。
 一つは探究型の学習への準備ができたことだ。同校は2017年度よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、天草の地域課題をテーマにした学校設定科目「天草サイエンス」では、地元企業を取材しレポートにまとめる。今回の作文を通して、論理性のある文章展開、主張を相手に伝える説得力のある書き方を身に付けられた点で意義があった。
 もう一つは、書きたいことをキーボードで入力できるスキルを習得できたことだ。スマートフォンのフリック入力はできても、パソコンでのキーボード入力に慣れていない生徒は多い。高校卒業後の進路や将来の職業選択を考えても、また、1人1台の端末で協働的に学ぶ機会が飛躍的に増えることを考えても、今後、キーボードでの文書作成能力は高校生には必須だ。
 同校はすべての教育活動を「社会とつなげて考えられる」キャリア教育の視点を大切にしてきた。今回の取り組みは将来に生きるICTスキルの習得にもつながったと捉えている。

挑戦し未来を展望
 コロナ対応に加え、高校は来年度からの新学習指導要領実施に向け変革を迫られている。坂口教諭はコンクール応募が教師自身にも「こんなことをしたい、あんなこともできそうだ」という明るい展望をもたらしたと感じている。今回は教師主導での応募だったが、生徒自身の主体的な応募も期待したいという。
 「未知のものを面白がれるのが高校生のよいところ。本校でも作文を書いてみて楽しかった、学びを一つの形にまとめるきっかけになった、など生徒が得るものがあった。学校賞という大きな栄誉もいただき自信にもつながった。全国の多くの高校生にもぜひ、挑戦してほしい」(坂口教諭)。


インタビューに応じる天草高校坂口教諭

日本大学 第3回「高校生作文コンクール」募集要項

【応募資格】
 全国の高校に在籍する1~3年生

【応募要領】
・テーマ=「私たちが生きていく上で目指すべき社会のかたちとは」
 ※作文のタイトル(題名)は自由。

・用紙・字数=専用フォーマット(Word)に作品を入力しプリントアウトした用紙にて応募。文字数は作文本文1200字以上1600字以内。
 ※句読点はそれぞれ1字に数え、改行のための空白箇所は字数として数える。

・応募作品=応募は日本語で書かれた作品で、一人1点まで。
 ※応募は個人のオリジナルで未発表の作品に限る。
 ※応募作品は理由を問わず返却しない。
 ※入賞作品の著作権、版権は日本大学・日本教育新聞社に帰属。

・応募締切=2021年10月15日(金)消印有効

・応募方法=コンクール専用HPより応募用紙をダウンロードし作品を入力。必要事項を明記の上封書でコンクール事務局まで郵送。
 ※コンクール専用HP=http://www.kyoiku-press.co.jp/events/2021nu または「日本大学 作文コンクール」で検索。
 ※ホームページから各種資料がダウンロードできない場合は事務局まで連絡を。

【入賞】
個人賞
 『日本大学賞』1名=賞状、楯、副賞(図書カード30万円分)
 『優秀賞』2名=賞状、副賞(図書カード20万円分)
 『佳作』5名=賞状、副賞(図書カード5万円分)

学校賞
 3校=賞状、楯、副賞(学校用備品10万円分)
 ※学校賞は、学校単位で取りまとめて団体として応募することで選考対象となる(「学校応募用名簿」も同封)。

【発表】
 入賞発表=2021年12月

応募・問い合わせ先
 〒108-8638 東京都港区白金台3―2―10 白金台ビル2F
 コンクール事務局・日本教育新聞社『高校生作文コンクール』係
 電話03・3280・7058(受付時間=平日9時~17時)
 コンクール専用HP=http://www.kyoiku-press.co.jp/events/2021nu

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