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【寄稿】生きづらい子ども社会への提言

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 コロナ禍の中、文科省は令和2年度に自殺した児童・生徒の人数が過去最多だったことを明らかにした。「NIKKYO WEB」に回を重ねて寄稿していただいているフリーライターの島崎由美子さん(フリーランスライター・障がい者スポーツ指導員・薬剤師)から、この実態を前に子どもの居場所づくりを改めて進めることの必要性を説く寄稿があった。全文は次の通り。


写真=島崎由美子さん

 コロナウィルス感染症が社会を揺さぶり続けたこの一年、政府が求めた3密回避やマスク着用といった「協力要請」、「道徳規範」が前提の危機管理は、常に脆弱性が付きまとい、感染拡大だけでなく、生きづらい社会の中に差別や偏見が生み出され、子どもたちのしんどさが広がっています。

 令和3年10月13日文部科学省は、全国の小中学校と高校、特別支援学校を対象とした昨年度の不登校やいじめ、自殺などの状況について公表しました。小中学校の不登校数は19万人以上(約1万5千人増)、自殺した児童や生徒は400人を越え(約100人増)、いずれも過去最高となりました。コロナ渦による学校や家庭の環境変化は、子どもの意識や行動にどのような影響を与えたのでしょうか。

 今回の調査結果で、自殺した415人の児童や生徒が置かれていた状況は、「不明であった」とする回答が全体の半分を超えていました。学校や教育委員会が把握できていない事例が増えているようです。

 不登校の要因は、「無気力と不安」が最多となりました。昨年度最多であった「いじめ」は9万5000件以上減少していました。

 コロナ禍により児童や生徒どうしの接触が減ったことや、例年に比べて休校が多かったことなどが、友だちとの関係に大きなアンバランスをもたらしたかもしれません。結果として、学校に通えず孤立した児童や生徒が増えているのです。

 いじめの状況について詳しくみてみると、唯一増えたのが「携帯やパソコンによるひぼう・中傷」でした。最近の5年間で2倍の約1万8800件まで増えています。筆者は、コロナの感染対策によって子どもたちのコミュニケ―ションが減少していると考えていました。人と人との心の距離が離れてしまい、「生きづらい、しんどい、疲れた」といった子どもたちが増え、やがて、「バカ、死ね、いなくなれ」という深刻な声となって拡散しているようです。

 子どもたちは、友だちと楽しくおしゃべりしたり、給食を食べたり、みんなで行事に取り組んだり、一緒にゲームをしたり、時には相談し合ったり、学校には学びの場がたくさんあります。

 通常授業が再開してからもオンラインの授業は続いています。不登校や引きこもりの子どもたちの居場所が減っていくばかりです。心の距離が広がったままです。

 昨今、子どもの社会においても、他者に対して「寛容」ではなくなっているようです。
 世界的にみても特に寛容性が低いと言われる日本では、コロナ感染者数が増える度、ゆがんだ感情が生まれ、弱者に対する偏見と差別が助長されています。

 ウィズコロナ社会では疲れやストレスが溜まり、心が荒んでいくのがわかります。けれど、人の心を強く叩くことは許されないことです。

 「限界だ、もうダメだ」という声を訴えにくい学校や家庭ではない、第3の居場所が求められています。そんな居場所が少しでも増えてほしいと思っています。心の弱さを素直に出せる、受け止めてあげられる優しい社会を作っていくことが大切です。心が折れないよう、たくさん遊んで元気でいて欲しいと、今は切に願うばかりです。

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