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「学校施設・設備整備の課題に関する調査」まとめ

10面記事

施設特集

 健康への配慮に向けて、8割以上の自治体が「トイレの洋式化・乾式化」を「実施した」「今後実施する」と答えた一方、トイレ洋式化の整備の在り方については「すべてのトイレを洋式化する」と「多くを洋式化するが一部和式も残す」がいずれも4割強の回答で拮抗した。日本教育新聞社が実施した「学校施設・設備整備の課題に関する調査」からは、そうしたことが分かった。本年度の調査結果を詳しく紹介する。

【健康への配慮に向けた整備&整備予定】
 文科省の「新しい時代の学校施設検討部会」中間報告(以下、中間報告)では、「新しい生活様式を踏まえた健やかな学習・生活空間の実現」の中で、健康への配慮がうたわれている。
 各自治体に、健康への配慮に向けて整備したこと・今後整備する予定があることを複数回答で聞いたところ、全体の84・2%となる388自治体が「トイレの洋式化・乾式化」と答えた。
 「特別教室への冷暖房設備(エアコン)設置」も314自治体(全体の68・1%)あった。その一方で「体育館への冷暖房設備(エアコン)設置」は76自治体(同16・5%)にとどまった。
 22自治体が回答した「その他」(同4・8%)の中には、「手洗い場の自動水栓化」(中部地方・村、中国地方・市)、「網戸設置」(北海道、市)などがあった。

【トイレ洋式化の整備の在り方】

 健康への配慮に向けた整備&整備予定の中で、全体の84・2%となる388自治体が答えた「トイレの洋式化・乾式化」。今回の調査では、トイレ洋式化の整備の在り方についても聞いた。
 各自治体の回答は「すべてのトイレを洋式化する」が全体の41・0%となる189自治体、「多くを洋式化するが一部和式も残す」が全体の45・6%となる210自治体と、約半数ずつに分かれた。
 住宅の洋式トイレ保有率が平成20年の段階で約9割(総務省調査)に達している中、令和2年度でも洋式化率が57%(文科省調査)にとどまる小・中学校施設。都道府県による洋式化率の差も大きい。令和元年度に文科省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」が出した「これからの小・中学校施設の在り方について」でもトイレの洋式化を求めている。
 家庭で洋式トイレが普及し、和式トイレになじみがなく抵抗感のある児童・生徒も多い中、「多くを洋式化するが一部和式も残す」と回答した自治体には、その理由を自由記述で聞いた。
 多くの自治体が答えた内容として「便器に直接肌が触れることを嫌う児童・生徒がいるため(一部和式も残す)」(近畿地方・市、関東地方・市、中部地方・市、東北地方・市など多数)など、洋式トイレに抵抗感がある児童・生徒もいることが挙げられた。
 もう一つ、回答が多かった内容として「和式トイレ使用の教育を必要と考えているため」(九州地方・市、中部地方・市、関東地方・市、北海道・市、中国地方・市、東北地方・市など多数)がある。
 また「学校からの要望」(近畿地方・市、関東地方・市、東海地方・町など)も多くあり、中には「1校だけ、学校からの要望で和式を残した」という自治体も見受けられた。
 「災害時の避難所となった際、和式トイレを希望する方がいることも考えられるため」(関東地方・市など)、「来訪者(地域住民など)に対する配慮」(九州地方・市)など、避難所として使用する時をはじめ地域住民への配慮している自治体も一定数あった。
 「財政面での負担が大きくなるため」(関東地方・町、近畿地方・市、東北地方・市など)と、「すべて洋式化するだけの財源が確保できない」(中国地方・市)など、財政面の課題も挙げられた。

【バリアフリー化に向けた整備】

 インクルーシブ教育システムの構築に向けては、学校施設のバリアフリー化が求められる。中間報告でも「令和7年度までの整備目標を踏まえた取り組みの加速化が必要」としている。調査では、各自治体が管轄する学校施設ですでに整備を終えた、または今後整備を進める予定の取り組みを、複数回答で選択してもらった。
 「校舎、屋内運動場への多目的トイレ(車いす利用者が使用できる)の設置」が315自治体(全体の68・3%)、「校舎、屋内運動場へのスロープ設置(段差解消を目的)」が292自治体(同63・3%)と、多くの自治体で取り組まれていることが分かった。
 「校舎へのエレベーター設置」も180自治体(同39・9%)あった一方、「医療的ケアの実施に配慮したスペースの確保」は12自治体(同2・6%)にとどまった。

【給食室へのエアコン設置とドライ化】

 給食室へのエアコン設置や「ドライ化」の進展も課題になっている。今回の調査では、そうした取り組みを進める予定があるかどうかも聞いた。
 エアコンについては全体の40・8%の188自治体が「設置した、または設置する予定がある」と答えた。その一方、ドライ化について「行った、または行う予定がある」と回答したのは82自治体(全体の17・8%)にとどまった。
 「現在のところ、計画はない」は66自治体(同14・3%)、「全校がセンター方式のため、給食室を持つ学校施設がない」は184自治体(同39・9%)だった。

【その他】
 その他、学校施設整備について感じる課題などを自由に記入してもらった。
 その中では「整備しなければならない項目は多いが、補助金や予算が少ないため、満足な整備を行えない」(近畿地方・町)など、予算面の課題を挙げる自治体が多数みられた。関連して「老朽化に対し、改修が進まない」(四国地方・市)など、老朽化対策に向けた財源確保の厳しさも多数挙げられた。
 また「GIGAスクール構想など複雑かつ多様化する学校施設整備に対して、知識を持った技術者や維持管理を行う職員が不足している」(中部地方・市)など、技術者や職員の確保に悩む自治体の意見も複数あった。

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