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スタジオ収録の感染対策に紫外線照射装置を導入

12面記事

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収録スタジオに設置された紫外線照射装置「Care222(R) iシリーズ」

モノと空気を同時に除菌する「Care222(R) iシリーズ」
明治大学

 新型コロナウイルスをはじめとした除菌対策では、密閉空間における換気や消毒の徹底が重要となる。こうした中、明治大学ではオンデマンド授業等のコンテンツを収録するスタジオに、日焼けなどの人体への悪影響を及ぼさない紫外線で、除菌可能な装置を導入した。そこで、情報メディア部メディア支援事務室の田山善裕事務長と許貞恩氏に、導入経緯や活用状況について話を聞いた。

人体に悪影響を及ぼす紫外線をカットし、さまざまなウイルスや細菌に効果を発揮

 メディア支援事務室では、オンライン授業の配信やオンラインガイダンス、履修登録システムのサポート、学生たちが機材を使用する授業の補助など、ICTによる学習支援を担当している。これらの授業・課題制作で使う映像コンテンツを収録するスタジオに導入したのが、ウシオ電機株式会社(本社=東京都千代田区/社長=内藤宏治)が開発した、特殊な技術で人体に悪影響を及ぼす紫外線をカットし、モノと空気の両方の除菌を可能とした独自の技術「Care222(R)」を搭載した抗ウイルス・除菌用紫外線照射装置「Care222(R) iシリーズ」だ。
 「Care222(R)」とは、波長222mmをピークに持つエキシマランプに特殊な光学フィルターを組み合わせることで、ヒトに悪影響を及ぼす波長をカットした抗ウイルス・除菌技術。目には見えない光(紫外線)を照射するだけなので、ふだんの生活を妨げることがなく、新型コロナウイルスをはじめとする、さまざまなウイルスや細菌に対して効果を発揮する。
 同製品は一般的な照明器具のように天井に、もしくはポールなどの取り付け治具を用いて天井付近へ設置するため、設置場所の有効スペースを削ぐことなく利用が可能だ。加えて、アルコールなどの薬剤が使用できない場所でも使え、スイッチ1つで自動運転できるため除菌作業の負担を減らす効果もある。
 そのため、すでに国内医療機関を中心に教育機関や公共施設などに数千台を出荷。待合室やトイレなど不特定多数の人が共用する場所や、密になりがちな会議室や食堂などの衛生環境維持として導入が広がっている。

作動音が発生しない、運用の手間がかからない収録スタジオの環境にマッチング
 きっかけは教育関係者を対象にした展示会で、紫外線で除菌する方法があると知ったことだった。「というのは、もともと収録スタジオはカラオケボックスのような密閉空間で、収録中はノイズが入るため換気設備も使えません。しかも、これまでの対応ではアルコール消毒を使用前後にお願いするだけでしたが、出演者は必ずマスクを外して撮影するため飛沫の心配があり、何か他の感染予防策はないかと悩んでいました」と田山事務長。
 そうした中で、この紫外線照射装置は作動音が発生しないため収録の支障にならない、設置場所に合わせて点灯モードをプリセットしているため、スイッチを押すだけで運用上の手間もかからず、通常の100Vコンセントで使用できるなど、まさに収録スタジオの使用環境にマッチしていたことが決め手になったという。
 その後、同社のWebサイトを通じて紫外線の殺菌メカニズムや導入事例、広島大学との共同研究による新型コロナウイルス不活化・殺菌効果の実験結果などを確認して問い合わせを重ね、今年の7月には3部屋ある自撮用のスタジオ(約16平方m)と大型スタジオに各3台ずつ、合計12台の「Care222(R) iシリーズ」を導入した。

スタジオ利用者に周知し、コロナ禍の安心感を高める
 今回設置した収録スタジオは、ポールの上部に製品を設置し、3方向から対象に照射するスタイルだ。「キャスター付で移動が可能なため、大型スタジオで使用するときは持ち込んで使うことも想定しています」と話す。
 なお、「Care222(R) iシリーズ」は紫外線照射のガイドラインに合わせて、設置位置から照射対象物の距離と人との距離、どのような使用方法かを勘案し、最適な点灯モードで納品するかたちになる。本スタジオの運用方法では、収録と次の収録との間に10分間のインターバルを設けており、その間に短時間で除菌することを想定した設定になっている。
 これまでの活用状況については、「スタジオの使用頻度は月間で20~40回ほど、授業で使う場合の収録時間は1回あたり2時間ほどになります」と許氏。その上で、効果については肉眼で確かめることはできないが、「使用する教員や職員、学生には事前に紫外線照射装置が設置してあることを周知し、安心感を高めてもらっています」と説明した。
 新型コロナウイルスの影響で大学が閉鎖されている間は、教員も自宅から作業することが多くなるため、むしろ感染が収まってきてからの方が学生を中心にスタジオを使用する機会が多くなる傾向のようだが、紫外線は様々な菌・ウイルスの殺菌・不活化が可能であり、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザなど他の感染症への対策もできるため、引き続き導入効果が期待できる。

自動で除菌ができる製品を組み合わせて、消毒作業の負担を軽減する
 現在、学校では日常的な消毒作業や清掃を行う教職員の負担が課題になっているが、学生が必ず触るようなところを常時消毒するのは難しいため、そうした場所の除菌に「Care222(R) iシリーズ」は向いていると田山事務長は指摘する。
 「たとえば本学なら、PCの貸し出しロッカーや証明書の自動発券機といったタッチパネルを使う機器に活用できると便利なのでは。感染の収束には時間がかかることが予想される中で、今後は消毒作業と併せてこうした自動で除菌できる製品を組み合わせることで、効率的かつ確実な感染予防を実現していくことが必要だと思います」と期待した。


明治大学メディア支援事務室の収録スタジオ

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