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道徳教育の変遷・展開・展望 新道徳教育全集第1巻

18面記事

書評

日本道徳教育学会全集編集委員会・押谷 由夫・貝塚 茂樹・高島 元洋・毛内 嘉威 編著
学会の総力結集、充実の道標に

 待望していた高著、好著が刊行され、誠にうれしく、力を得た思いである。折しも、「特別の教科道徳」が設置され、具体的な取り組みが進められ、その充実が大きく期待されている時である。日本道徳教育学会の総力を結集した「新道徳教育全集」全5巻の刊行は、これからの道徳教育の推進と牽引の格好の道標となるに違いない。
 全巻の総論、中核とも言うべきが、第1巻の「道徳教育の変遷・展開・展望」であり、評者は迷うことなく、これをまずひもといた。うれしかった。ありがたかった。心を打たれた。現代、あるいは現在の徳育の実情や課題を正しく捉えるには過去からの変遷を解さねばならぬことは自明だ。
 第1巻はIV部22章と附章から成る。第I部は「近代日本の道徳教育の変遷」、第II部は「新たな道徳教育像の探究」、第III部が「現代の教育課題と道徳教育」、第IV部は「日本の伝統的な思想と道徳」について詳述している。ユニークな「附章」では、近代と戦後の道徳教育を「創った人びと」として福沢諭吉や西田幾多郎など代表的な碩学の実践を的確かつ簡潔に紹介、解説している。
 巻末の、道徳教育史略年表、人名索引、事項索引は、読者にとって誠に便利、有益な情報であり、編者の心配りがありがたい。本書が、研究者の文献にとどまらず、広く実践者も手元に置かれ、日々の授業に厚みと重みを増す一書として活用されることを切に望みたい。
(3300円 学文社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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