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持続可能な端末活用を目指して 「GIGA」推進2校が座談会

10面記事

ICT教育特集

 「GIGAスクール構想」で整備された1人1台端末を使った授業が始まって半年が経過した。そこでは、思った以上に手応えを感じている学校がある一方で、うまくいかないと悩んでいる学校もある。過去のICT環境整備で広がらなかった、学校での持続可能な活用につなげていくカギはどこにあるのか―。そのヒントを、進行役を務めた東京学芸大学教育学部の高橋純准教授と、実践が進む小・中2校とが語り合った。(文中敬称略)

クラウド通じ日常的に研修
協働編集作業でしりとり

札幌市立稲穂小学校(左:佐々木 啓輔 教諭、右:菅野 光明 校長)

愛知県春日井市立高森台中学校(左:小川 晋 教諭、右:水谷 年孝 校長)

 高橋 高森台中学校の1人1台端末活用は、わずか数カ月の期間で「活動を共有する」使い方まで進展。クラウドの活用は授業だけでなく、職員会議や研修、生徒会活動にまで波及しており、水谷校長は、先生方から「こんな授業に挑戦した」といった報告が学校のチャットに連日届くようになっていると話しています。
 一方、今年4月に1人1台端末が整った稲穂小学校は、日常の授業とあまり差がなく、特別な準備をしない、無理のないICT活用をコンセプトに、デジタルのメリットを生かしつつ、手書きの良さも融合した新たな学びの形を模索しています。それぞれ活用状況を教えてください。

 小川 例えば数学では教員が机間指導して個々の学びの状況を見守っていますが、実は端末の中でも自分に合った課題を選択して学習に取り組んでいます。理科ではこれまで教員が作っていたグラフ作成や表作りも生徒が自分たちで行う、社会科では教室の中を動き回って議論することが日常化しています。
 もう一つの変化は、日常の教員同士のクラウドを通した情報交換が教員研修の一端を担い始めていることです。「全国学力・学習状況調査」の結果分析も、5分程度の動画にして研修に置き換えました。

 佐々木 昨年5月の休校時における授業の動画配信では、実物投影機だけを使って教科書や見本となるノートを見せる形で行いました。心掛けたのは子どもたちが飽きないように3~5分にまとめることで、そんな持続可能でシンプルな授業づくりが、今の1人1台端末の活用に生かされていると感じています。
 本校では、昨年夏ごろから端末の操作に慣れる教員研修を実施。その中ではAIの音声入力変換が優れていることに気付くなど、最新技術を使う楽しさも知りました。教員が慣れるところから始めたように、子どもの端末活用もクラウド上で共同作業ができる「ジャムボード」でしりとりをするところから始め、端末で写真を撮る、画面共有するといった活動を行いました。また、実用していく上ではローマ字入力が欠かせないため、キーボード練習にも取り組みました。

 高橋 今はこうした「遊び、使ってみる」活動から、「学習に生かす」活動にシフトしているそうですね。

 佐々木 高学年になると視力が良くない子も増えているため、GoogleMeet(ビデオ会議)で目の前の端末で拡大して見られるようにしています。また、耳が聞こえづらい子もいるため、私の声を音声文字変換アプリで端末に送ることもしています。
 理科の単元「物のとけ方」は黒板だと傾向がつかみづらかったので、集計結果が円グラフ化されるGoogleフォームを利用。さらに「ジャムボード」の活用も、単に自分の意見を貼り付けるだけではなく、自分たちで分類して整理できるようになりました。

 小川 「ジャムボード」の共同編集は、本校で行っている地図の上に調べたことを貼る活動に似ていますね。これを始める前は、地図と文字情報をリンクして理解する生徒は少なかったと思うとともに、学習が苦手な子も集中度が上がるなど、みんなで活動を進めるときに向いています。

 高橋 一見するとワークシートの穴埋め問題のようだが、知識のつながりを促しているのがミソ。地図上にプロットするというのは端末活用の導入部としてはやりやすいし、学習効果があるのでは。実はこうした小さな積み重ねによる知識の深まりを実感できるのが、日常的にICTを活用している教員の喜びでもあるんですね。

 菅野 全部小さなことなんです。例えば課題に対して予想を書くのは個の活動ですが、「ジャムボード」で2、3人集まれば、いきなり交流が始まってしまう。やってみたら「子どもの反応がすごくいいな」というのは意外と大事で、教員の手応えが工夫を呼び、それがさらなる手応えにつながる回転になっていく。今活用に苦労している学校は、それがうまく回り始める前に、「いつまでにこれをやりましょう」ということだけを決めてしまって、先生たちが困っているように感じます。

 水谷 共同編集で情報を集めるのは、どの教科でも始められることです。インプットするだけの授業から、自分で情報収集して共有につなげられる意義は大きいと思いますね。

経験積み、効果的な使い方に
「学習楽しい」の声増え自信

 高橋 両校で活用が進んでいるポイントは、教員が実物投影機や電子黒板などでICT活用を行ってきた経験値があること。もう一つは、子どもが使う端末なのに、あらゆる校務や研修を通じて操作に慣れるなど、教員が使うところから始めていることです。
 さらにいえば、子どもに対してスキルトレーニングをしっかり行っている点や、授業で使い始めるときは、失敗しても授業が成立するような活用からスタートしている点に注目しています。というのも、初めてICT活用をする教員は指導が難しいプレゼンや調べ学習からやりたがりますが、教員は慣れていない、子どものスキルもない、そこが課題だと思っているからです。

 菅野 端末の操作に慣れるという点では、実物投影機の導入時と同じ状況が起きているように思います。例えば、初めは教科書を大きく映すだけだったのに、リコーダーの指使いをアップにして教えるようになるとか、経験値がたまると効果的な活用を目指すようになります。オンライン授業も半ば強制的に始まったわけですが、1カ月以内に全教室でできるようになり、結果的に自信を深めるきっかけになったと思っています。

 高橋 オンライン授業では両校とも黒板を映していない。これはICTに慣れている学校なら当たり前で、教員のノートが映せるならば、その方がノートの書き方も学べるし、子どもと同じ道具の方が伝わりやすいからです。

 水谷 1学期が終わって子どもたちに聞いたら「学習が楽しくなった」という声が増えていたので、これまでやってきたことへの自信を深めました。特にみんながやったことを共有する手段ができたことは良かったと思っていて、教員も教科の壁を越えて授業のやり方をまねし始めたり、競い合うようになったりしていますから。

 高橋 校長先生がそうした現場の創意工夫を認めていること。それが活用を進めるカギですね。一方、1人1台端末になってからもプリンターは使っていますか。

 水谷 端末が導入されたら使わないと思っていましたが、むしろ自分で作ったものをアピールするのにプリンターで印刷して掲示することが多くなっています。

 高橋 持続可能なICT活用という観点で聞いた両校の取り組みは、やったことのない人には小さな活用だと感じたかもしれません。けれど、小さな活用は現場に立っている教員の創意工夫から生まれるもので、その連続が経験値を生み、やればやるだけ進歩していくものです。ぜひ、端末の活用を始めた学校は参考にしてほしいですね。

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