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実験で使う加熱器具として最適 一番使いやすく、安全性が高い「理科実験用ガスコンロ」

12面記事

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「理科実験用カセットコンロ」を使って加熱実験(狛江市立緑野小)

東京・狛江市立緑野小学校

加熱実験器具として学校で定着
 「理科実験用カセットコンロ」は、家庭用のカセットこんろより一回り小型で、四脚の網台(五徳)が付いているのが特長。小学校の教科書にも実験器具として事例が掲載されたことで、アルコールランプよりもスピーディーに加熱できる火気として導入が進んでいる。
 緑野小学校でも、数年ごとに買い足して理科室に10台以上を常備。理科の授業では4年生から火気を扱うことになるが、重要な実験ではほとんどの教員が「理科実験用ガスコンロ」を使っているという。
 その理由について、理科主任を務める山田誠也教諭は「アルコールランプだとアルコールの量や芯の長さを調整する必要があり、事前の準備が大変。また、目盛りによって火力を均一にできるため、火加減での結果のバラツキがなくなるのが大きいとともに、児童がちょっと触ったぐらいでは倒れないので、安全性が高いことも長所になります」と語る。
 近年では学校で火気を使った実験をする場合、教員が注意しなければならないのが、多くの児童が火の扱いに不慣れなことだ。同校では4人に1台を基本として活用しているが、マッチを擦ったことがない児童が大半を占める中で、理科実験用ガスコンロの点火つまみを回すことさえ躊躇してしまう子もいると指摘。「だからこそ、平らな場所に置く、燃えやすいものを近くに置かない、ボンベはカチャッと音がするまでセットするなど、授業の中で段階を踏みながら指導しています。しかも、ボンベが熱くなったら自動で火を消す機能や、正しくセットしないと火を点けるつまみを回せないなど、安全設計にも配慮されているのがありがたいですね」


山田 誠也教諭(理科主任)

コロナ禍で実験を行う工夫も

 そんな「理科実験用ガスコンロ」は、4年では、金属や水のあたたまり方や性質の違いについて学ぶ単元『もののあたたまり方』。5年はものを水に溶かし、水の温度や量による溶け方の違いを調べる単元『ものの溶け方』。6年は『水溶液の性質とはたらき』の単元などの実験に活用されている。
 現在、理科の新学習指導要領では、子ども自身が「観察・実験」を中心とした探究の過程を通じて問題を解決したり、新たな問題を発見したりする経験を増加させていくことが求められている。その中で、山田教諭も「コロナ禍によって不自由は感じているが、理科ならではの実感を伴った理解に実験は欠かせない」と考えている。
 そのため、密にならないよう2人1台の交代制で実験を行い、先に予想の時間に充てるグループと、教室に戻って考察するグループとに分けるといった工夫も取り入れている。

教科担任制でのさらなる活用に期待
 一方、小学校では来年度から5・6年に教科担任制が導入されるが、そうなれば理科の授業もより教材研究に時間がとれたり、一回行った授業を次の授業で改善できたりと新しい時間の使い方ができるようになると期待する。「その意味でも、準備に手間がかからず、高火力で実験時間も短縮できる『理科実験用ガスコンロ』は、今後さらに子どもの学びを深めるために必要な機器になっていくと思います」と話してくれた。
 なお、一般社団法人日本ガス石油機器工業会では、「カセットこんろ」の安全で正しい使い方を学べるDVD教材を作成し、全国の学校に無料配布している。

 問い合わせ=03・3252・6101
 https://www.jgka.or.jp/

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