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接面を生きる人間学 「共に生きる」とはどういうことか

16面記事

書評

鯨岡 峻・大倉 得史 編著
相手の心を理解する関係づくり

 本書は、「関係発達論」とその基本理念である「接面」の、さまざまな実践現場における到達点と今後の発展の可能性についてまとめられた論文集である。関係発達論の根底にあるのは、「人間は共に生きなければ幸せが得られないのに、共に生きようとすればそこに必ず葛藤が生まれ、生きにくい一面をもたざるを得ない」という考え方であり、それをより豊かなものにするのが「接面」が生まれる関係を築くことなのである。
 「接面」とは聞き慣れない用語であるが、「相手の心の動きが私につかめたとき、接面が生まれてくる」とされ、相手を分かろうとして気持ちを相手に向けているときに生じるものという。この接面が最も生かされている関係は親子関係である。養育者は、理屈抜きに子どもの心の動きを的確に把握し、その主体性を尊重した対応をしている。つまり自然に「接面」が生まれる関係を築いているのである。
 この接面を生み出す関係を築ける学級担任はどれくらい存在するのだろうか。学級は、教師と児童が人間としてのよりよい生き方を求め、共に考え、共に語り合い、その実行に努める場である。今、子どもとの関係で悩んでいる教員には、教育をはじめとするさまざまな現場で接面を生きて活躍している実践者のエピソード記録をぜひ読んでほしいと願う。
(4180円 ミネルヴァ書房)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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