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冷凍食品の活用で豊かな学校給食を目指して コロナ禍における学校給食での冷凍食品活用に向けた研修会

11面記事

企画特集

会場受講者の試食の様子

 食品を「とれたて・作りたて」の状態のまま保存でき、厳しい衛生管理のもと調理され、安全に活用できる冷凍食品は、栄養バランスや安全性のみならず、安定的な供給や調理時間の短縮という利点がある。豊かな献立づくりの観点から学校給食には欠かせない存在だ。子どもたちに正しい食習慣や食文化を伝えるためにも役立つ。
 冷凍食品の活用法を通して、学校給食の役割を見直し、豊かな献立を実現するための研修会が、12月4日、仙台市の会場とオンラインで開かれた(主催=日本教育新聞社、共催=一般社団法人日本冷凍食品協会)。
 開会にあたり日本冷凍食品協会の木村均専務理事は、学校給食のコロナ対応にふれ、「給食関係者の皆さんには、子どもたちの栄養と健康維持に尽力されたことに敬意を表したい。本研修会で、冷凍食品の使いやすさや栄養価、衛生管理について再認識する機会となれば」と挨拶した。

基調講演
食育推進に果たす冷凍食品の役割
金田 雅代 元文部科学省学校給食調査官・女子栄養大学名誉教授

 基調講演では「食育推進に果たす冷凍食品の役割」と題して、元文部科学省学校給食調査官で、女子栄養大学名誉教授の金田雅代氏が講演した。
 まず、新型コロナウイルスをめぐる文科省の通知のうち学校給食に関するものを取り上げ、この間の対応と学校給食関係者の役割を確認した。

 2020年5月には国から配膳過程での感染を防止するため

 ・品数の少ない献立で適切な栄養摂取をする
 ・給食調理場で弁当容器等に盛り付けて提供する工夫
 ・それらが困難な場合に簡易給食を提供
 ・食べる際には机を向かい合わせにしない

 ―などの工夫が示された。

 こうした背景をもとに、1品減らす代わりに汁物を具沢山にして提供した例や、パック詰め給食の盛り付け時間を確保するため冷凍食品を積極的に活用した例などが紹介された。金田氏は「いつもと違う献立に子どもたちが“何が入っているんだろう”と食材に集中し、味わって食べることができた。黙食だからこそ得たものもあった」と指摘する。
 一方、給食設備は自治体や学校ごとに異なるため、全国でさまざまなコロナ対応給食が提供されたことも事実だ。夏場の調理室の環境を配慮して、簡易給食や個包装の食品を選択したケースもあった。
 その際、栄養教諭や学校栄養職員に求められる役割は、「どんな給食を提供するかを根拠とともに周囲にしっかりと説明し、理解を求めること」だと金田氏は強調する。
 ある小学校では児童が配膳しない代わりに、学級担任が一人ずつ量を加減して盛り付けていたという。「普段から児童の喫食状況を把握しているからできる対応だと感動した。栄養教諭も今は置かれた状況の中で学ぶ時間と捉えてほしい。それが今後の学校給食に役立つはず」。

冷凍食品と学校給食は両輪
 学校給食は時代の要請に応えながら、教育の一環として実施されてきた歴史を持つ。冷凍食品とのかかわりも「両輪」だと金田氏は表現する。
 冷凍魚、フィレ、冷凍コロッケ、スティックなどが登場したのは1950年代で、子どもたちの反応を生かす形で業務用冷凍食品が発展していった。同時に、給食内容もこのころからぐっと豊かになっていく。
 ただし、和食・洋食・中華などと種別を明確にした献立や、「主食、主菜、副菜、汁物」など組み合わせの整った献立が普及してきたのは2000年以降のことだという。
 そうした変化に伴い、求められる食品のニーズも新たな傾向がみられる。岐阜県学校給食会が2018年から2019年にかけて県内の栄養教諭らを対象に実施した調査によると、近年、一次加工品のニーズが高まっているという。
 一時加工品とは、加熱や冷凍、乾燥などの処理をした農産物や畜産品のことで、さまざまな献立に使いやすい素材を求める傾向があるとわかる。
 また、同会は栄養教諭が考案した「大豆の包み揚げ」を冷凍食品メーカーと共同で製品化するなど「提案型」の開発をした実績もある。
学校給食関係者側から時代のニーズに照らした提案をすることも「食事内容の多様化には役立つのではないか」と金田氏。「日本冷凍食品協会の各種調査などを活用しながら、家庭の食生活を知り、食に関する指導に活かしてほしい」と栄養教諭や学校栄養職員への期待を語った。


金田氏が講演で提示した資料

実践事例発表
冷凍食品を有効に活用した豊かな給食の提供
聖火リレーにちなんで各地の食紹介
村井 佳奈 栄養教諭(利府町立利府小学校兼利府町学校給食センターみんなのお昼キャロット館)

 冷凍食品を活用した学校給食の実践事例を、村井佳奈栄養教諭が発表した。利府町は仙台市に隣接したベッドタウンで「利府梨」の産地としても知られる。2カ所の給食センターから町内9小中学校に給食を提供している。
 2019年度から冷凍食品を活用して47都道府県の食を紹介する「RIFU2020給食プログラム」に取り組んだ。これは町内のスタジアムで東京2020オリンピックのサッカー競技が開催されることにちなんだ町の公認プログラム。聖火リレールートの順で47都道府県にちなんだ郷土料理や食材を提供する「リレー給食」、日本と対戦するチームの国の料理を紹介する「オリンピックメニュー」などに挑戦した。
 このプログラムを成功させるのに大いに役立ったのが冷凍食品だ。「三重県」の日は、ごはん、牛乳、津ぎょうざ(揚げぎょうざ)、伊勢ひじきの炒り煮、もずくのみそ汁を提供。ジャンボぎょうざと、もずくは冷凍食品を活用した。ボリュームのある津ぎょうざが子どもたちに好評だったという。
 「大分県」では、ごはん、牛乳、とり天、小松菜のおひたし、団子汁を提供。このうち、とり天、小松菜、デミほうとうは冷凍食品を活用した。
 家族で話題にしてほしいとの思いから、リレー給食の献立の解説は献立表の裏面を活用して家庭にも周知した。
 取り組みを終えて村井氏は「冷凍食品を有効に活用しながら、豊かな日本の食文化や海外の食文化を児童生徒に知らせることができた。初めて経験する味、香り、食感など多様な食の経験につながった。自分自身も学びになった」と話す。

特産品の冷凍加工

 町の特産品である「利府梨」は、生で提供するほか、ジャムやシロップ漬けなどの加工品も学校給食に取り入れている。
 2020年度から、町内の食品加工業者で加工した冷凍梨のすりおろしを様々な献立に活用している。シャリシャリした食感とほのかな甘みが特徴だ。カレーや牛丼、プルコギに使うほか、肉にかけるソースと幅広く使える。
 その他、ハンバーグ、宮城県産銀鮭、ほうれんそうや、にんじんペーストなど、主菜から一次加工の素材品まで幅広く取り入れており、発表で紹介された多くの献立で用いていた。「効果的な食に関する指導を行うには、日々の給食が大事。給食が生きた教材となるよう、冷凍食品をはじめ様々な食品を活用して、献立の改善をおこないたい」と語った。

町の特産品「利府梨」を使った献立を多数紹介

意見交換会
学校側からの丁寧な発信や説明が、充実した献立の実現につながる

 冷凍食品を上手に学校給食に活用するポイントを共有するため、講師の金田氏、発表者の村井氏、日本冷凍食品協会広報部長の三浦佳子氏と受講者による意見交換会が行われた。

 ―「リレー給食」実現で工夫した点は
 村井 毎月3、4県の献立を作成するため、ネットや学校給食関連の雑誌を駆使して献立を考案しました。各地の特徴ある食材を探すのに納入業者に相談したところ、多くの提案があり、パンフレット以外の商品や、地域の特産品も紹介してもらうなど協力いただけました。購入の際はまず取り寄せて、味や価格、アレルギー対応を確認しました。栄養バランスを考え、味がよければ栄養強化品も採用する、献立の一部に取り入れるなどの工夫もしました。

 ―これからの学校給食の充実に向けて必要な視点は
 金田 少量の発注や産地を限定したようなピンポイントの食材の発注は、従来、ある程度のロットが必要だと思われていました。しかし、村井さんの実践から、丁寧に説明すればさまざまな協力を得られることも分かりました。第4次食育推進基本計画では学校給食における地場産物を活用した取組等を増やすよう目標数値も設定されています。少子化や単独校に対応できるよう各メーカーも小ロットの注文に対応できるよう変わりつつあるようです。その際は事前に十分に情報収集をして計画を練る必要があるでしょう。本研修会のように冷凍食品メーカーから商品について幅広く情報やその根拠を直接聞けるのはよい機会ととらえています。

 三浦 学校給食の献立は児童生徒の実態や地域によりバラエティ豊かです。冷凍食品各メーカーは児童生徒の摂取量や栄養バランスに応じた規格や形状など努力を続けています。金田先生の講演や、村井さんの実践から日々の食事が子ども達の成長を支えていることを再認識できました。今後も現場の声を反映した研修を企画していきます。本日はありがとうございました。

会場受講者の質問に耳を傾ける(左から村井氏、金田氏、三浦氏)

企業の取り組み紹介
多彩な献立に活かす商品を紹介

 冷凍食品メーカー等6社から担当者が登壇し、学校給食製品への取り組みポイントと、商品の説明を行った。各社の発表後、会場受講者は調理実習室へ移動し試食を、オンライン受講者は日本冷凍食品協会が制作したDVD教材を視聴し、冷凍食品についての理解を深めた。

1 エム・シーシー食品株式会社

 冷凍食品のほか、レストラン向け調理缶詰やレトルト食品にも強い同社。「スティックバーグ<ケバブ風>Fe・Ca」はトルコ料理のケバブをイメージしたハンバーグ。鉄分とカルシウムを強化し低塩にした。ピタパンにはさんで食べられ、世界の料理紹介にも使える。「かぼちゃとさつまいものコロッケ<Fe・Ca>」は国産野菜を使用。ほうれん草や豆乳の発酵食品、生パン粉を用いるなど手作り感を高めた。いずれも乳・卵のアレルギー対応でサイズ規格も多彩に揃えている。

2 キユーピー株式会社

 おいしさと安全性、機能性にこだわり、学校給食向けには凍結卵などの素材品から、オムレツ、卵焼きなどの加工品を中心に製造販売する。大量調理でも使いやすく、原料産地や規格、簡便調理に配慮した商品を取り揃える。「凍結全卵(調理用)HVNo.3」は粘りやつながりを保持し、かきたま汁に最適。和風味の「スノーマン 鶏そぼろと大豆のたまごやき」は食塩相当量を100gあたり0・5gに抑えた。「スノーマン Caたっぷりオムレツ(ほうれんそう)」は乳成分を含まないオムレツ。

3 テーブルマーク株式会社

 パン、めん、米飯を中心に簡易給食に対応する個包装や、アレルギー対応、国産原料、栄養素強化に力を入れる同社。今回紹介したのは冷凍パン2種。どれも焼きたてを急速冷凍し、自然解凍で使える。1食分に合わせて包装しているので使いやすく衛生的。簡易給食対応で採用例が増えている。「食パン6枚切り(1枚包装)」のほか、規格違いで8枚切り2枚包装もある。卵・乳成分不使用の「こっぺぱん70」は切れ目を入れていないのでそのままでも、サンドにも応用できる。規格違いで90gもある。

4 株式会社ニチレイフーズ

 学校給食向け「安心逸品シリーズ」は3次原料までさかのぼったすべての原材料で着色料、化学調味料、香料を使っていないことを確認し、商品化する。「春巻Fe35(米粉入り)」「春巻Fe50(米粉入り)」は主原料で国産品を使用。2月4~20日の日程で開催される北京2022冬季オリンピックを意識した中華の献立にも最適。アセロラゼリーなどのカップデザートは、バイオマス原料を使用した包材・資材にリニューアル。SDGsを意識した学校給食を提供できる。

5 株式会社名給

 学校給食への納入を原点に創立72周年を迎える同社。国産素材を中心に対応し安定した供給を目指す。ユーザーとの情報・意見交換をもとにメーカーに製造を依頼したオリジナル商品開発に強みがある。今回は3種類のかんきつ系ゼリーを紹介した。「サンビ 埼玉県産桂木ゆずゼリー40g」や「サンビ 湘南ゴールドゼリー40g」は地域の特産品を活用したご当地ゼリーとなる。「サンビ 冷凍ダイスゼリー(広島県産レモン)1kg」は、ダイス状にカットされたゼリーで、フルーツポンチなどに適している。

6 株式会社ヤヨイサンフーズ

 2020年11月に震災からの復興を果たした気仙沼工場で生産する学校給食向けシリーズ「海のおかず」を紹介した。水産原料を使用し、卵・乳成分原材料を使わない製品で「さば味噌カツ(鉄・Ca)」「気仙沼産カツオカツ(鉄・Ca)」など4種類・各2規格。魚の風味を残しつつ、味付けに工夫をこらして食べやすくした。「イートベジ」シリーズは大豆ミートを使用した新商品。ハンバーグやハムカツ、ぎょうざ、肉団子など一般商品を発売中で今後、学校給食向け商品も検討している。

DVD『学校給食充実のために冷凍食品ができること』

 オンライン受講者向けに放映された日本冷凍食品協会制作のDVD『学校給食充実のために冷凍食品ができること』は、講師の金田雅代氏が監修し、学校給食関係者向けに冷凍食品に関する基礎的内容や学校給食での活用事例を解説したもの。冷凍食品の正しい理解や活用のメリットが分かる。
 前半は冷凍食品の製造工程と品質管理を解説。「前処理」「急速凍結」「適切な包装」「マイナス18度以下で保管」の冷凍食品の4条件や、これらの品質と製造工程の衛生管理レベルを一定基準以上に満たした工場製品に付与できる「冷凍食品認定証マーク」を解説する。
 後半は学校給食への活用事例として、福島県・川俣町学校給食センターの献立例を紹介。生肉の二次汚染リスクを回避し、調理時間の短縮化をしたうえで、組み合わせの献立を実現できる事例となっている。

アーカイブ配信のご案内

 2月28日(月)までの期間、下記URLより研修会の様子がご覧いただけます。
 コロナ禍における学校給食での冷凍食品活用に向けた研修会 https://youtu.be/nR_nf7oY-hM

冷凍食品を学校給食に利用するメリット

1 衛生的である
 マイナス18度以下で管理されることで微生物が活動できず、二次汚染のリスクが軽減される。

2 前処理をしているので、調理現場の省力化が図れる
 野菜、魚等は不可食部分を除去し、洗浄し、食べやすいサイズにカットがされ、生ゴミがほとんど出ない。調理作業が容易になり、調理時間を大幅短縮。

3 安定品質,安定価格,安定供給
 年間を通じて、とれたて・つくりたての品質を安定的に提供、季節による価格変動が少なくコスト管理が容易です。必要なときに必要な分だけ利用できる。

4 食材の発注,仕入れの業務が軽減
 規格化された食材が中心のため、多種にわたる食材の仕入れに関する業務を軽減。

冷凍食品認定証マーク

 日本冷凍食品協会が定める認定基準をもとに審査を行い、適合した工場を「認定工場」としています。認定工場には、継続的な検査や指導が行われ、認定工場が生産する冷凍食品には「冷凍食品認定証マーク」を製品に付けることが認められています。

役立つコンテンツが盛りだくさん!冷食ONLINE

 (一社)日本冷凍食品協会による、冷凍食品情報サイトです。冷凍食品の解説のほか、管理栄養士による冷凍食品のアレンジ、冷凍食品研究に携わる専門家へのインタビューや料理人によるコラムなど、冷凍食品を楽しむコンテンツが充実しています。
 日本冷凍食品協会では、学校給食関係者を対象に、冷凍食品に関する講演会や調理講習会を無料で実施しています。お問い合わせは下記まで。

 一般社団法人 日本冷凍食品協会
 〒104-0045 東京都中央区築地3-17-9 興和日東ビル4階
 Tel:03-3541-3003(代) FAX:03-3541-3012
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