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デジタル化で「学び続ける教師」の環境を支援 文科省が新たな教師の学びに関するQ&Aを公開

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教師の専門職性の高度化に向けて
 文科省は、教員免許更新制を発展的に解消。「新たな教師の学びの姿」を実現して教師の専門職性の高度化を進めていくことを打ち出している。
 そもそも教員免許更新制が廃止される理由は、現状の研修スタイルや内容が、今後必要な学び続ける教師の在り方を考えた場合に関連性が低いと判断されたからに他ならない。
 つまり、社会のニーズが刻々と変化する時代においては、絶えず自分自身をバージョンアップしていく姿勢が問われており、10年に1度の講習では常に最新の知識技能を学び続けていくことにはならない。しかも個別最適な学びが求められる中で、共通に求められる内容を中心とする更新制とは方向性が異なっているからだ。
 こうした中、文科省は昨年11月、中教審を通じて議論してきた「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等のあり方についての「審議まとめ」を公示するとともに、Q&A「皆さんからの10の質問にお答えします!」をWebサイトに公開した。
 この中で、教員免許更新制を廃止した後の教員研修の仕組みがどうなるかについては、多様な内容・スタイルの教員研修を取り入れることと、適切な研修が受けられるための制度化を図ることが必要としている。その上で「新たな教師の学びの姿」として高度化するためには、研修受講履歴の記録管理、当該履歴を活用した受講の奨励という仕組みが、より効率的に機能するよう、デジタル技術を活用していくことを目指すとしている。

個々に適した学びの提供と可視化がカギ
 具体的には、自身の学びの内容や学んだ学習コンテンツの種類、学びを通じて得た気づきなど多角的な情報を、受講の都度タイムリーに入力できる仕組み(研修受講履歴管理システム(仮称))を構築し、教師自らの振り返りや、次の学びを選び取ることに活用していくための検討を進めていく意向だ。
 さらに、教師の学びを支える環境を高度化できるよう、教育委員会等が実施する研修だけでなく、大学や民間事業者等が提供するプログラムも含めて、学習コンテンツの質保証、ワンストップ的に情報を集約し、適切に整理・提供するプラットフォーム、学びの成果を可視化するための証明といった3つの仕組みを構築していくことが必要としている。
 加えて、教員免許更新講習がなくなったあとも、大学が有償で提供する「免許状更新講習」については、教師の資質能力の向上に効果が高いとし、今後も中核的な役割を占めることが期待されている。

さらなる多忙化を防ぐ課題も
 このように「審議まとめ」では、一人一人の教師が、誇りを持って主体的に研修に打ち込める環境の実現を目指さなければならないと示唆している。ただし、これに伴って教師の多忙化がさらに進むのではないか、主体性が見られない教師にはどのように対応していくのかといった課題があるのも事実だ。
 したがって、文科省では小学校の35人学級の計画的整備、教員業務支援員等の支援スタッフの充実、部活動改革、学校向け調査の精選・削減などに取り組んでいくとともに、任命権者が適切な対応を図ることができるよう、必要な研修を受けているとは到底認められない場合の基本的考え方等について、教師の資質能力に関する指針の改正やガイドラインの策定を行うとしている。
 なお、教員免許更新制の発展的解消については、現在、文科省が通常国会への法律提出を目指して、具体的な検討・調整を行っているところだ。教員免許の有効期限等についても、この中で取り扱われることになる。

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