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みんなのねがいでつくる学校

13面記事

書評

奈良教育大学付属小学校 編
川地 亜弥子 解説
子どもと向き合い主体性育む

 本著は、子どものエピソードに基づいた取り組み例が豊富に掲載され、改めてこれまでの日本の学校教育の良さを再認識する貴重な一冊である。
 第2章では、教科教育について、各教科の系統性(教材分析)とともに、子どもを日々見取る学びの姿(子ども分析)両面の重要性を具体的に指摘している。第3章では、教科外教育は、「大人の言うことを聞く力」を付けるのではなく、自分たちで「どうすることがよりよいのか」を模索し、言葉にし、やってみるという試行錯誤の過程そのものを大事にする指導である、と述べている。
 第4章の特別支援教育については、どの子も発達への願いをもっている。しかし、その願いをどう表現してよいか分からず、時にその表現の仕方を本人も望まない形で表していることがある。そのような子どもの「見えないねがい」に寄り添いながら、子どもと向き合うことが求められる、との言葉が胸に刺さった。
 そして、第5章で学校は子ども、教師、保護者の願いを育て、深める場所であり、そのことで社会の問題や矛盾に気付き、他者と共に変えていこうとする子どもを育てる場所であると力強く主張している。
 現在、さまざまな教育が求められている学校現場であるが、流行を追いつつも不易である学校の本質を見失わないよう私たちに訴えている書である。
(2200円 クリエイツかもがわ)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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