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よりよい教育環境に向けた課題~バリアフリー、トイレ洋式化、新JIS家具~

16面記事

施設特集

25年度までにバリアフリー化を加速
 今後の学校施設の改善点となる健やかに学習・生活できる環境の整備としては、昨年4月に全面施行された「改正バリアフリー法」に対応した施設づくりが挙げられる。
 学校施設のバリアフリー化は、インクルーシブ教育システム構築の視点や、災害時には避難所として地域の高齢者や障がい者等も含め、不特定多数の方々が利用する視点からも重要視されてきたが、新設・改築工事後の学校以外はいまだ整備が遅れているのが実態だ。
 20年5月時点の調査によれば、校舎における車椅子用トイレ整備率は6割、スロープ等による段差解消率は場所によって6~8割、エレベーターは3割弱といった具合。屋内運動場に限れば、さらにその実施率は低くなっている。
 とりわけ、現在では小中学校等の約8割に特別支援学級が設置されていることや、医療的ケアが日常的に必要な児童生徒も5年間で1・4倍になっていること。また、障がいのある教職員などの雇用機会を促進することを踏まえても、早期の整備が必要になっている。
 そのため、文科省は国庫補助率を引き上げ、今後25年度末までに学校施設のバリアフリー化を加速化する計画で、校舎・屋内運動場とも車椅子用トイレを避難所に指定されているすべての学校に整備するほか、スロープ等による段差解消も全学校で改善。エレベーター(1階建ての建物のみ保有する学校を含む)も、要配慮児童生徒等が在籍するすべての学校に整備する方針を掲げている。

子どもが快適に学習・生活できる環境づくりを
 耐震化を完了したあとの設備面の大規模改修で、多くの自治体が最優先課題と位置づけているのが「トイレの洋式化」になる。何しろ、いまだ5割近くが和便器のままというのが現状だからだ。暗くて不衛生なイメージがあった学校のトイレを改善することは、子どもの健康やモラルの向上につながるとともに感染症対策としても有効になるため、床・ブースのドライ化、抗菌仕様、自動ドア化、手洗い場の自動水栓化も含めて改修することがトレンドになっている。
 また、公立小中学校における約7割の教室が 65 平方m未満という、現代の子どもの体躯に合わない教室の狭さも改修時のポイントといえる。しかも、1人1台端末の導入によって教室の狭さに拍車がかかることになった。なぜなら、教室には生活機能としての荷物収納ロッカーや掃除用具入れに加え、近年では電子黒板やプリンターなどの情報機器も詰め込まれるようになっているところに、タブレット保管庫を備える必要が出てきたからだ。
 こうした中で、学校用家具の見直し機運も高まっている。たとえば従来の教室机は端末と教科書を同時に並べるには窮屈になることから、より天板サイズの大きい新JIS規格の教師机が推奨されている。机・椅子とも、子どもの体格に合った高さ調整が可能な利点もある。
 あるいは、現在公立小中学校で3割に留まっている多目的教室など、自由度の高い学習空間を増やしていく中では、グループ学習に向いたレイアウトに変更できる台形のテーブルや、移動に適したキャスター付きの椅子、場所をとらずにスタッキングできる机・椅子なども注目されている。
 一斉型授業から脱却し、子どもが主体的かつ協働的に学ぶ場を設ける上では、従来の量的整備から質的整備へ転換を図る、こうした環境面の充実は不可欠だ。

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