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学校施設の老朽化による事故~安全面の不具合が5年間で約2倍に増加、重大事故は毎年60件発生~

18面記事

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定期的な点検で必要な修繕を
 学校施設の老朽化は、小中学校だけでなく、幼稚園や高等学校、特別支援学校でも進行している。老朽化改修を急がなければならない理由には、安全面・機能面両面でさまざまな不具合が生じ、児童生徒にケガを負わせたり、命の危険に直結したりするおそれがあることが挙げられる。
 事実、消費者安全調査委員会の調べによれば、学校施設の老朽化が原因と思われる重大事故が毎年60件程度発生している。文科省も、外壁の落下など安全面の不具合を生じた学校施設は5年間で約2倍に増加したと指摘。劣化・損傷は大規模改修や長寿命化改修の改修サイクルよりも短い期間で発生するため、長期的な修繕計画がある場合であっても、定期的に点検を実施し、必要な修繕等を行うことが不可欠と注意喚起を促している。

外装材や窓の障子が落下
 老朽化による被害では、まず外装材の著しい劣化によって、モルタルやコンクリート片が落下した例がある。また、窓の障子が落下する事故も築22年・築31年の校舎で起きている。その原因とされるのが、上框に内蔵された障子の外れ止め部品のはずれや、戸車の劣化だ。
 同様に手すりが落下した例もある。築35年の校舎2階の教室前のバルコニーにおいて、生徒2名が手すりに寄りかかったところ、手すりが壊れて転落する事故が起きている。プレキャストコンクリート製の手すりとバルコニー支柱の隙間に雨水・潮風が浸入し、取り付け金物が腐食したことが原因だという。
 近年では、外壁で約100kg、校舎の出入り口の庇では約800kg、教室の天井梁下モルタルでは約50kgが落下する事故が起きているなど、適切な維持管理を行い、安全性・機能性を確保することが不可欠といえる。

雨漏りや給排水管破損も
 さらに、構造物自体の経年劣化では、床自体に段差ができる、屋上防水が機能しなくなって雨漏りがする、給排水管が破損する、トイレの臭気が消えないといった環境面の劣化も指摘されている。
 校舎は増築を重ねることにより部分ごとに建築年次が異なることが多いため、計画的な改修には施設の基本情報や過去の工事履歴等をデータベース化することが重要になる。維持管理にかける費用が必ずしも十分ではない中では、データを活用して建物全体の保守管理を見える化し、効率的な修繕を計画することが何より大切だからだ。
 また、配管の改修では露出化を行い、配管を目視できるようにする修繕方法もある。漏水が発生した場合、漏水箇所の早急な発見が可能になるとともに、床や天井等を壊す建築的な工事を伴わずに済むからだ。

校舎以外の老朽化にも注意
 体育館など屋内運動場の老朽化では、外壁が脱落する事故が危惧されるほか、地震などによって吊り天井や照明、換気ダクト、バスケットゴールなどの落下事故が見られる。
 また、経年劣化による床のささくれやひび割れを放っておくと、スポーツ中のケガを引き起こす要因となる。学校体育館の清掃では水拭きやワックス掛けが一般的だが、水分で床板が反ったり割れたりし、はがれやすくなる。そのため、バレーボールをしていた利用者が床に滑り込んだ際、はがれた床板が体に刺さり、大ケガになった事例もある。床の張り替えは大規模な予算がかかるため着手する難しさはあるが、現在ではコストを抑えた新しい補修方法も存在する。定期的な点検やメンテナンスによって、事故を未然に防ぐ対策が必要だ。
 一方、学校施設を取り巻く環境の老朽化にも注意を払わなければならない。ゴールポストや国旗掲揚塔、遊具が転倒する事故はもちろん、18年・大阪府北部地震の通学路におけるブロック塀の転倒による死亡事故では、全国の学校で一斉安全点検が実施されるとともに、改修費用として補正予算が設けられたのは記憶に新しい。

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