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「18歳成人」高校教員に調査 主権者・消費者・金融教育に課題感

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 日本教育新聞社が昨年、「18歳成人」に関する学校での取り組みについて高校教員を対象にアンケート調査を実施。調査結果から「18歳成人」への期待や不安が明らかになった。

「職場で話題」3割

 調査は2021年11月18から30日にかけて、高校教員を対象にウェブで実施し341人の回答を得た。担当教科の主な内訳は多い順に数学68人、社会64人、英語61人、国語51人、理科44人などとなっている。質問項目は12項目。成年年齢引き下げに関する学校の取り組みや、教員、生徒の意識の変化などを尋ねた。
 「職場で成年年齢引き下げについて話題になることはありますか」の問いには、「ある」(31・1%)、「ない」(11・1%)、「ほとんどない」(28・4%)、「あまりない」(29・3%)と、7割弱が職場では話題となっていないことがわかった<図1>。
 「18歳成人により高校生の意識(社会への関心、自立への意識等)に変化があると思いますか」の問いには、「あると思う」(60・1%)、「ないと思う」(24・0%)、「わからない」(15・8%)となった。
 学校で実際に「授業時間やホームルーム等で成年年齢引き下げについて生徒に説明する場を設けますか」と尋ねたところ、「設ける予定」(46・9%)、「設けない予定」(8・8%)、「わからない」(44・3%)となった。説明する時期については、「高校2年生」が最多で41・9%、次に「高校1年生」が32・0%、「高校3年生」が17・6%。18歳成人に関係のある授業を何月に行うかについては、「4月」(46・3%)が最多で、次いで「3月」(23・7%)、「7月」(23・0%)、「12月」(20・3%)など、年度や学期の節目を挙げた教員が多かった。
 成年年齢引き下げに伴い、多くの教員は生徒の意識に変化があることを予想しつつも、教員間で話題になるほどの関心の高まりはまだないこと、また実際に生徒に説明する場が十分設けられていないことも分かった。


<図1>職場で成年年齢引き下げについて話題になることはあるか

今後取り組みたい教育

 18歳成人にかかわる教育で、今後取り組みたい内容を具体的に尋ねたところ<図2>、「主権者教育」(78・9%)、「消費者教育」(74・8%)、「金融教育」(63・3%)となり、「飲酒防止教育」(27・0%)や「喫煙防止教育」(26・4%)、「依存症防止」(29・0%)など、従来高校教育で実施されてきたものよりも、ニーズが高いことが分かった(複数選択)。
 こうした教育を行うにあたり、欲しい教材としては「動画」(76・5%)、「リーフレット」(50・7%)、「出前授業」(49・3%)、「冊子」(41・3%)などが挙がった(複数選択)。一方、企業や団体が展開している教材の使用経験は「はい」(29・0%)、「いいえ」(71・0%)となり、活用は進んでいない。

学校現場で懸念されること

 一方、主権者教育に関する懸念点については「偏らない政治参画への促進方法」「特定政党や候補者への勧誘」「校内での政治活動」「政治的主張をする生徒への対応」などが挙がった。消費者教育や金融教育に関する懸念点については「通販などの契約トラブル」「勝手にアパートを契約しそこからの通学」「携帯やその他ローンの契約を勝手にしてしまう」「クレジットカードなどの消費者問題」「スマートフォン契約での未成年への名義貸し」などの回答が見られた。
 生活上のトラブルや被害を想定した記述が多いものの、具体的な事例などを挙げる回答は少なく、教員側にも漠然とした不安が広がっている可能性が見て取れた。

生徒指導や保護者対応にも影響

 今回の引き下げでは、飲酒、喫煙、競馬や競輪などの公営ギャンブルはこれまで通り「20歳未満は禁止」の現状が維持される。それを踏まえた上で「飲酒・喫煙については年齢規制が変わらないが、誤解する生徒がいないか不安」など、生徒指導上の課題を挙げた教員もいた。一方、「飲酒・喫煙などの規制緩和が施されると、校則などの抜本的な変更をせざるを得ない」「高校生なので、飲酒喫煙はダメのままにしておいてほしい」など誤った理解に基づく回答も見られた。
 保護者対応への不安として「高校3年生は成年と未成年が混在するので、保護者の同意等の必要性について対応が分かれる場合があるかもしれない」「生徒指導事案が発生した時に、18歳以上の生徒が出た場合、親に連絡するかどうか(すると思うが)」などがあった。
 他にも「高校生という立場と成人という立場の区別をどう指導していくか」「アルバイトや金銭的な指導」「頭髪・服装指導」など、生徒指導上の不安が数多く挙がる結果となった。


<図2>18歳成人に関わる部分で今後取り組んでいきたい教育(複数選択可)

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