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問いでつくる歴史総合・日本史探究・世界史探究

16面記事

書評

歴史的思考力を鍛える授業実践
島村 圭一・永松 靖典 編
生徒の意欲喚起する実践研究の試み

 新たな高校学習指導要領・地理歴史科では必履修科目「地理総合」「歴史総合」が誕生し、選択科目として「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」が設定された。
 本書は埼玉歴史教育研究会が新しい学習指導要領を意識しながら組み立ててきた理論と、試みた実践15事例を収める。暗記学習が想起されがちな歴史教育だが、歴史的思考力を育成する授業づくりを目指してきた同研究会にとっては、新たな学習指導要領が求める授業はその延長線上にあると言っていい。
 問いを表現する学習、課題(問い)を設定して展開する学習、主題を設定して考察、構想する学習に対応すべく、「問い」に焦点化した実践研究の記録でもある。
 埼玉県教委は、平成22年度から当時の東京大学大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)と連携する。その中で、取り入れてきた知識構成型ジグソー法の他、討論する授業、解釈型歴史学習、質問づくりなどの知見を生かして生徒の意欲を喚起し、ワークシートの活用を通して学習の成長を見取るなど、実践事例を読むことで、さまざまな工夫に触れることができる。
 同時に多様な生徒と向き合い、興味・関心を喚起する教師自身の発問力や資料の活用力が問われるだけでなく、生徒の課題意識を深め、新たな課題に目を見開かせるような授業のプロデュース力が求められることが分かる。授業づくりを考えるヒントにしたい。
(2200円 東京法令出版)
(矢)

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