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スクールティーチャー 教職の社会学的考察

13面記事

書評

ダン・ローティ 著
佐藤 学 監訳
織田 泰幸・黒田 友紀・佐藤 仁・榎 景子・西野 倫世 翻訳
時間・空間超えた課題と本質に迫る

 1975年の著作の邦訳である。主に1960年代前半に行われた調査を基に、アメリカにおける教師の実像に迫っている。いわゆる「古典」であるものの「現代・日本」の教師像との共通点や非共通点を吟味・検討するような作業はそれほど必要ではなく、驚かされる。時間・空間を超えてなお当てはまるような、教師の仕事や生活に関する指摘が豊富である。
 本書の前半では、教職の社会的地位などがどのように成立してきたか(第1章)、教職の地位や報酬にはどのような特徴があり、入職の動機や経緯はどのようなものか(第2章)、どのようにして教師は一人前の振る舞いを身に付けるのか(第3章)、階層(昇進)構造や報酬システムの特徴はどのようなもので、それが教職への関与・没入にどう影響しているのか(第4章)など、社会的に見た教職の特徴を描き出している。
 一方、後半では、どういう点に教師は達成感ややりがいを感じるか(第5章)、教師の仕事に伴う「不確実性」とそれが生み出す葛藤はどのようなものか(第6章)、教師は何に喜び、何に困り、どういった改革を望むのか(第7章)、教師は自分と他人の何に関心を持ち何に関心を持たないのか(第8章)など、教師の内面に注目した分析が行われている。
 名著を介して、時間・空間を超えて変わらない・変えられない教職の本質を考えたい。
(4400円 学文社)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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