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協同学習を深める 主体的、協同的で生き方につながる学びの実現

17面記事

書評

杉江 修治 著
全員が成長を支援し合う集団づくり

 学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」、中央教育審議会答申「令和の日本型学校教育」の「協働的な学び」という言葉が一般化してきた現在、小・中学校の授業で、子ども同士のグループ活動がよく見られるようになった。と同時に、グループでの学びに深まりや広がりが見られないと悩む先生方の声を多く耳にする。そこで本著の「協同学習」の理論を学ぶことの重要性を強く感じる。
 著者は、協同学習は「教育の基盤に協同を置いたすべての実践」であると述べている。すなわち、教師の指示でグループになって話し合うという形だけでは、協同の効果は生まれない。学級の仲間全員の成長意欲を認め合い、全員の成長を互いに支援し合う集団づくりを学習指導を通して実現することに狙いがあると主張している。すなわち、「協同学習」が単なる学びの手段ではなく、学びの目的、原理であることを著者は強く訴えている。
 本著は、小論を重ねた構成であり、「協同学習」の理論と具体的実践が分かりやすく展開されている。教師の子どもの見方、指導の在り方、さまざまな指導スタイル等、現在、学校現場で当たり前に行われている多くの事柄に疑問を投げ掛けている点も大変興味深い。「きょうどう」の意味について、そして「教える授業」から「学ぶ授業」への転換に具体的示唆を与えてくれる一冊である。
(2420円 ナカニシヤ出版)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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