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学校における熱中症事故事例と教訓

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前例がないことによる油断が禁物に

 18年7月、愛知県豊田市内の小学校で、校外学習から戻った1年児童が教室で倒れ、救急搬送されたが、熱中症で亡くなった。
 事故に至った経緯は次の通りだ。当日は熱中症対策として帽子の着用や水筒を持たせた上、午前10時に約1キロ離れた公園へ歩き出した。途中で児童が「疲れた」と言ったため、担任は手を引いて歩いた。公園で30分ほど虫捕りや遊具遊びをした後、11時半ごろには学校に戻った。児童は帰りの途中にも「疲れた」と話したという。教室では担任が男児を見守っていたが、唇がみるみる紫色になり、意識を失った。
 学校によると出発時の気温は32度だったが、市内の気温は午前11時には33・4度まで上昇。最高35度以上が予想される「高温注意情報」が出されていることは学校も把握していた。しかし、「これまで校外学習で大きな問題は起きておらず、中止する判断はできなかった」と校長は振り返っている。
 この言葉からも分かる通り、なぜ猛暑日になると分かっていながら校外学習を実施したかという疑問には「これまで事故が起きていなかった」ことによる油断があったことが伺える。どんな事故にも共通することだが、前例がない、定例化や慣習化されている中にこそ、思わぬ危険が潜んでいることを痛感する。すなわち、これまでの常識がいつの間にか非常識になっていることに気づきにくいのが、人間の弱さだ。

「環境・からだ・行動」のいずれかの要因でも発生する
 文部科学省と環境省が昨年5月に発出した「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」では、このような過去の熱中症事故を教訓として掲載されている。
 (1)「熱中症を引き起こす3要因(環境・からだ・行動)が関わりあうと熱中症は起こる」では、アメリカンフットボール部での部活動中に起きた事故を紹介。8月、高校3年生の男子が練習試合にフル出場し、第4クオーター終了直前にベンチで倒れ、意識がなくなり2日後に死亡した。気温32度、湿度61%であり、被害者本人の肥満度は77%であった。
 (2)「それほど暑くなくても、2要因(からだ、行動)のみで熱中症は起こる」では、野球部での部活動中に起きた事故を紹介。6月、高校2年生の男子がグランド石拾い、ランニング、体操・ストレッチ、100mダッシュ2本を行っていたところ、運動開始から約2時間後に熱中症になり死亡した。当日は気温24・4度、湿度52%であり、被害者本人は肥満傾向であった。
 (3)「屋内であっても熱中症は起こる」では、剣道部での部活動中に起きた事故を紹介。8月上旬、高等学校3年男子が期末試験明けの剣道部活動時、当日は晴天で日中30度を超す気温だった。10時半から18時ごろまで練習し、顧問教師から話を聞いた後、19時から練習を再開。突然具合が悪そうに道場の隅にうずくまった。横になって休むように指示をしたが練習終了後、意識等に異常が見られたため、病院に搬送したが当日に死亡した。

 学校管理下における熱中症は、こうした「環境・からだ・行動」のいずれかの要因でも発生する。そして、その状況を回避するための指導者の姿勢には、ここでも過去の常識がアダとなっているケースが見受けられるのも事実だ。
 たとえば、部活の練習中は水分補給をできないような雰囲気をつくって、生徒が飲水することをちゅうちょしてしまう。体調不調を訴えた生徒に対して、仮病を使って練習を怠けているものだと安易に判断して休憩を与えない。ぐったりしている生徒を見ても、他の生徒に介抱を任せて自分は練習に集中してしまうといったことが、多くの熱中症事故の引き金となっている。

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