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教員免許更新制廃止。廃止による教員への影響は

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特集 教員の知恵袋

 2022年2月25日、政府は教員免許更新制が廃止されると発表しました。

 これを受けて、「どのような理由で廃止されるのだろう」「廃止によってどのような影響があるのだろう」などと気になっている教員の方もいるのではないでしょうか。

 そこで今回は、教員免許更新制の概要や廃止の背景、教員への影響について解説します。廃止にあたって教員はどのような対応を行う必要があるのでしょうか。

出典:文部科学省『令和4年度における免許状更新講習の開設予定調査結果を踏まえた教員免許更新制に係る留意事項について(通知)

教員免許更新制とは

 教員免許更新制は、2007年の6月に改正教育職員免許法が成立したことにより、2009年4月1日に導入されました。教員免許の有効期間は教員免許状の授与に必要な学位と単位を満たして所有資格を得た状態から10年間です。

 導入の目的は、教員として必要な資質や能力を保持することのほか、最新の知識・技能を身に付けることにより、教員が自信と誇りを持って教壇に立つこと。そして、社会の尊敬と信頼を得ることです。

出典:文部科学省『教員免許更新制の概要』『3.免許状の有効期間(修了確認期限)

教員免許更新制の基本制度

 教員免許更新制は、原則、有効期間満了日(修了確認期限)の2年2ヶ月~2ヶ月前までの2年間に、大学等が実施する免許状更新講習を30時間以上受講・修了する必要があります。

 その後、免許管理者となる都道府県教育委員会に申請を行います。有効期間の延長が可能な理由に該当したり、講習の免除対象者に該当したりする場合には、必要な申請などの手続きを行います。

教員免許更新制の対象者

 教員免許更新制の対象者は次のとおりです。

 (1)現職教員
 (2)実習助手、寄宿舎指導員、学校栄養職員、養護職員
 (3)教員採用内定者
 (4)教育委員会や学校法人などが作成した臨時任用(または非常勤)教員リストに登載されている者
 (5)過去に教員として勤務した経験のある者
 (6)認定こども園で勤務する保育士
 (7)認可保育所で勤務する保育士
 (8)幼稚園を設置している者が設置する認可外保育施設で勤務する保育士 など
引用元:文部科学省『教員免許更新制の概要

 ただし、現職教員であっても、次に該当する場合は免除対象者となり、免許状更新講習を受講せずに、免許管理者に申請を行うことによって免許状を更新できます。

 (1)優秀教員表彰者
 (2)教員を指導する立場にある者
 ・校長(園長)、副校長(副園長)、教頭、主幹教諭または指導教諭
 ・教育長 または指導主事
 ・免許状更新講習の講師 など
引用元:文部科学省『教員免許更新制の概要

 なお、免除対象者に該当する場合でも知識技能が不十分な場合には免除にはなりません。

出典:文部科学省『教員免許更新制の概要

教員免許更新制は2022年7月に廃止へ

 2022年2月25日に『教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案』が閣議決定されました。

 法改正実現後、同法律案の施行日である2022年7月1日以降に免許状の修了確認期限、もしくは有効期間の満了の日を迎える方は、教員免許状更新講習の受講や更新手続きの必要がなくなります。

 その代わりに、公立小学校の校長・教員の任命権者は研修を受講するほか、当該校長および教員の資質向上のための取組み状況に関する記録を作成しなければならなくなります。

出典:文部科学省『令和4年度における免許状更新講習の開設予定調査結果を踏まえた教員免許更新制に係る留意事項について(通知)』『教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案

廃止へ至った背景

 教員免許更新制の廃止の背景には、中央教育審議会から廃止を求める声が挙がっていたことがあります。

 2021年8月23日に行われた中央教育審議会の小委員会では、教員免許の更新に際して、教員の負担が高まっているとの認識が示されました。

 教員の負担が高まっている理由として、教員免許更新制の導入前と比較して、教員の労働時間が平日・土日ともに増加していることが挙げられます。

 同委員会では、教員免許更新制の廃止を求める声とともに、次のような改善策も提案されました。

 ・講習内容の質の向上
 ・2年間で30時間の講習を受講するという仕組みの見直し
 ・各教員の勤務実績や研修受講歴等を踏まえた講習の免除対象者の拡大
 ・免許状更新講習のオンライン化の促進 など

出典:文部科学省『「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて審議まとめ(案)

教員免許更新制廃止後の変化

 教員免許更新制の廃止後となる2023年4月1日から、教員の資質の向上を目的とした新たな研修制度が始まります。都道府県または市町村の教育委員会が“指導助言者”となり、校長や教員に対して、研究記録を活用して今後の研修について指導・助言することとしています。

 また、中央教育審議会は、研修を受けない教員に対して職務命令による研修の受講のほか、命令に従わない教員に対する適切な措置を講じることも検討しています。

出典:『中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第4回)・更新制小委員会(第6回)合同会議』『教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案

教員の負担を軽減しつつ資質向上を目指す教員免許更新制の廃止

 教員免許更新制は、もともと教員の資質向上を目的として導入された制度です。

 しかし実際には、教員の労働時間の増加するにつれ、多忙な教員が2年間で30時間を確保して研修に充てることが現実的ではなくなってきています。

 教員免許更新制の廃止と新たな取組みによって、教員の負担を軽減しながら資質の向上を目指すことが期待されています。

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