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通常学級の発達障害児の「学び」を、どう保障するか

12面記事

書評

学校・家庭・福祉のトライアングル・プロジェクト
田中 裕一 著
全国の好事例と新動向などを解説

 平成13年に「特殊教育」から「特別支援教育」へと呼称が変わり、19年度には新制度が開始され、“特別支援教育元年”と呼ばれた。現在へと至る二十数年の歩みは、特別支援学校、支援学級だけでなく、「通常学級」での障害児の「学び」の保障史でもある。
 本書からは校種間の引き継ぎの重要性、学習指導要領の「解説」に明記された障害のある児童・生徒への具体的な指導方法の工夫、小・中学校の通級指導担当教員を定数化し、令和9年度の完全実施に向け進行中であること、文科省と厚労省の副大臣の下、まとめた『家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト』報告を受け法改正し、教育と福祉の連携を一層強化してきたことなど、変化してきた事柄がよく分かる。
 PART1「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学における指導・支援と実例」は、学校園段階の課題に応じた全国の好事例を紹介し、PART2は先進的な取り組みの根拠となる「障害のある子どもを支える制度・考え方」を解説。合間に、障害のある児童らの学びを支える関係者のコラムを配する。
 保護者が手に取りやすい装丁の本書だが、文科省特別支援教育調査官としての勤務経験がある著者のまなざしは学校、教員へも向けられている。「学び」の在り方がどう変容しているか、知識や考え方をアップデートできる一冊として、先生方にも薦めたい。
(1870円 小学館)
(矢)

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