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個別最適な学びの足場を組む。

18面記事

書評

奈須 正裕 著
蓄積された理論・実践から学ぶ

 令和3年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」に「個別最適な学び」という用語が登場した。言葉それ自体は新しいが、こうした実践は、既に100年以上前から行われており、蓄積されてきた理論的・実践的資産に学ぶべきと著者は指摘し、歴史をたどっていく。
 明治期の日本は指導の効率を求め、一斉指導という教授法を取り入れた。しかし、どの学級にも一斉指導になじめない子が存在。教師たちは、全ての子どもに価値ある学びが生じるよう、さまざまな工夫をしてきた。例えば、「個に応じた指導」「個別化・個性化教育」などだ。
 その「個に応じた指導」を、学習者視点で整理したものが「個別最適な学び」で、「指導の個別化」と「学習の個性化」の二つの要素で構成。1980年代に全国各地で盛んに実践された。
 中でも、愛知県東浦町立緒川小学校の「はげみ学習」「週間プログラム」「オープン・タイム」の実践を詳しく紹介。「個別最適な学び」を進める参考となるだろう。
 今、「教える」から「学ぶ」に転換が求められているが、子ども自身が自らに必要な学びを、自らの意思と能力で実現していくことのできる、学びの土台づくりが必要となる。
 本書は、読者の抱く素朴な問いに対して丁寧に解説していく方式なので、理解しやすい内容となっている。
(2200円 教育開発研究所)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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