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学校施設のバリアフリー化 誰もが支障なく学べる環境に

15面記事

施設特集

 高齢者、障害者の移動等における円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の改正を踏まえ、文科省は、今後25年度末までに学校施設のバリアフリー化を加速化する計画を進めている。そこで、6月に公表した「学校施設のバリアフリー化の加速に向けた取組事例集」から、学校施設をバリアフリー化するための基本的な考え方、方策等を紹介する。

 近年では、障害の有無や性別、国籍の違いにかかわらず、共に育つことを基本理念として、物理的・心理的なバリアフリー化を進め、インクルーシブな社会環境を整備していくことが求められている。これは学校においても同様であり、誰もが支障なく学校生活を送ることができるよう環境を整備していく必要がある。
 しかも、特別支援学級の在籍者数は、近10年間で16万人から32万人へと倍増しており、公立小中学校の約8割に特別支援学級が設置されている。加えて、医療的ケアが日常的に必要な児童生徒も増加しているほか、「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、障害のある教職員が働きやすい環境整備を進めていく必要がある。
 さらに、公立小中学校等の9割以上が災害時の避難所に指定されており、災害時には地域の高齢者や障害者等も含め、不特定多数の方々が利用することが想定されることから、バリアフリー化を強化していかなければならない。とりわけ、近年では台風や集中豪雨時の利用が増えており、安全・安心な避難生活を送ることができる環境の整備が急務になっている。
 また、学校は「社会に開かれた教育課程」の実現や、生涯学習・地域コミュニティーの拠点としての役割を果たしていく必要があることから、それらを体現する施設の整備は欠かせなくなっている。すなわち、バリアフリー化推進の基本的な考え方としては、

 (1) 快適で豊かな空間として整備する。
 (2) 地域防災拠点としての役割を果たす。
 (3) 障害の有無や性別、国籍の違いなどにかかわらず、学びの環境整備を推進する。
 (4) ユニバーサルデザインの考え方を念頭に、方策等を検討し、計画的にバリアフリー化を目指す。
 (5) 建物の内部だけでなく、屋外の経路等も含めてバリアフリー化を目指す。

 ―などが重要となる。

バリアフリー化の方策と留意点
敷地外から利用居室
までの経路に配慮

 次にバリアフリー化の方策としては、まずは学校設置者が所管する学校施設のバリアフリー化の実態を把握した上で、国が設定した整備目標も踏まえ、バリアフリー化に関する整備目標を設定することが必要としている。このため、新たに学校施設を整備する際には、児童生徒、教職員、保護者、地域住民等の多様な人々が利用しやすいように、ユニバーサルデザインの観点から計画・設計すること。また、既存施設においても、同様の考え方を念頭に、計画的にバリアフリー化を推進することが重要とした。
 その上で、本取組事例集では、具体的な計画・設計上の留意点について、トイレ、スロープ、エレベーターも含め、場面ごとにイラストによる解説で示されている。外部から建物に出入りしやすい建物配置としては、敷地境界及び駐車場等から明確で、できる限り段差のない建物配置とすることが重要。校舎間、校舎と屋内運動場間等の移動については、動線が短く、できる限り平面移動が可能な建物配置とすることや、児童生徒数の将来動向を的確に把握し、長期的な視野に立った建物配置とすることが重要。建物の出入口から屋外運動場へ至る通路で、やむを得ず段差が生じる場合は、適切な幅員及び勾配のスロープ、段差解消機等を設置することが重要としている。
 このようなバリアフリー化への考え方、方策を採り入れた上で、文科省は25年度末までに達成するべき学校施設のバリアフリー化の目標として、

 (1) 車椅子使用者用トイレを避難所に指定されているすべての学校に
 (2) スロープ等による段差解消をすべての学校に
 (3) エレベーターを要配慮児童生徒等が在籍するすべての学校に

―整備することを挙げている。

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