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情報分野の人材確保へ データサイエンス学部開設相次ぐ

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今年5月、教育未来創造会議では文理横断型教育の推進などが提言された=首相官邸のウェブサイトから

 情報技術分野の人材需要の高まりを受けて、近年、大学でデータサイエンス学部の新設が相次いでいる。経営や医療、スポーツなど幅広い分野で今後求められる「データサイエンティスト」の育成が目的だ。各大学が自らの強みと絡めるなど特色を強めている。

社会科学、医療系など

 データの分析や分析手法を学ぶデータサイエンスは、統計学・自然科学にとどまらず、社会科学や人文科学の分野でも幅広く使用されている。
 政府がまとめた「AI戦略2022」では、文理を問わず、全ての高校生や大学生が、初級レベルの数理やデータサイエンスの知識を習得することなどを目標に掲げた。これを受けて、官邸の教育未来創造会議でも5月、大学での「全学的なデジタルリテラシーの向上」を掲げ、入試科目の見直しや入学後の文理横断型の教育の実施を求めた。
 今春から高校で必履修科目になった「情報I」ではプログラミングやデータの活用の基礎を学ぶこととされ、選択科目の「情報II」でデータサイエンスを扱っている。

 国内で、データサイエンス学部は滋賀大学が平成29年に初めて開設して以降増加し、来春も多くの大学で学部や学科が誕生する。
 一橋大学は、データを駆使して社会課題を解決できる人材の育成を掲げる「ソーシャル・データサイエンス学部」を開設する。経済学や政治学など社会科学から最低一つの分野を系統的に学ばせるカリキュラムを特徴としている。
 授業の「PBL演習」(課題解決型演習)では、企業や政策機関などから実際の経営課題などに関するデータの提供を受け、少人数の演習を通して解決法を考える。個別入試では、数理的なものの見方を社会に応用する力を見るため、「総合問題」を出題する。
 同大学では「複雑に変化する現代の課題を解決するには、社会科学の教育研究でもデータサイエンスのみの教育研究でも不十分。社会科学とデータサイエンスを融合した教育研究が必要だと考えた」と説明する。
 公立の総合大学の名古屋市立大学が開設するデータサイエンス学部にもIT系、ビジネス系、医療系の三つの履修モデルがあり、それぞれの分野に関連したデータサイエンスを学ぶことができる。
 IT系では、統計や情報処理技術、AIの基礎から応用を学び、幅広い業界でデータ分析やシステム開発に関わる人材を養成する。ビジネス系では、経済学や公共政策などの基礎とデータとの関わりについて学ぶ。医療系では、保健・医療統計や公衆衛生などデータサイエンスと関わりの深い分野を学び、医療機関でのデータ管理などに関わる人材を育てる。

私立大でより顕著
全学的に展開する学校も

 データサイエンス学部・学科開設の動きは私立大学でより顕著だ。
 医療系学部を中心とした順天堂大学は「健康データサイエンス学部」を新設し、健康や医療、スポーツなどの分野でデータを扱う専門家として「ヘルスデータサイエンティスト」を育成する。超高齢社会を迎える中、質の高い医療提供のために健康データや診療データを分析する人材が求められるとしている。
 東北学院大学は情報学部にデータサイエンス学科を設け、小売りや製造など経済分野での幅広い活用を目指す。関西でも大阪成蹊大学や武庫川女子大学、京都女子大学などがAIやデータ分析を学ぶ学部を開設予定だ。
 データサイエンス教育を全学的に展開する大学もある。東京理科大学は令和元年から、学生の所属にかかわらずデータサイエンスの関連科目を履修できる学部横断型のプログラムを実施している。対象科目を取得すると、大学が学長名で「データサイエンス認証書」を授与する仕組みで、昨年度からは大学院版も始めた。
 これまでも統計やデータ解析などの科目は充実していたが、学生の意識を向けるためにも「データサイエンス教育」として可視化したという。
 同大学の矢部博データサイエンスセンター長は「履修率を見てもデータサイエンスに対する学生の関心は高い。今あるAI技術を学ぶことにとどまらず、次の技術につなげるための基礎力を身に付けてほしい」と話す。

来春、新設予定の主なデータサイエンス学部・学科

<国公立>
 一橋大学(ソーシャル・データサイエンス学部)
 名古屋市立大学(データサイエンス学部)

<私立>
 東北学院大学(データサイエンス学科)
 順天堂大学(健康データサイエンス学部)
 東京都市大学(デザイン・データ科学部)
 北里大学(データサイエンス学科)
 大阪成蹊大学(データサイエンス学部)
 京都女子大学(データサイエンス学部)
 武庫川女子大学(社会情報学部)

 ※いずれも設置届け出中

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