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不登校体験の本質と予防・対応 学校に行けない「からだ」

12面記事

書評

諸富 祥彦 著
初発対応の重要性と具体的手だて

 学校関係者が今喫緊の課題として捉えていることの一つに不登校児童・生徒数の増加がある。そういう中、本著書の題名に興味を覚え手に取ってみた。
 「はじめに」の中の「不登校体験は『からだ』の変容にある。不登校の予防・対応で一貫して着目すべきは『気持ち』ではなく『からだ』。子どもに気持ちを確認する言葉での対応はうまくいかない」との一文に強い関心を覚えた。また、身体感覚が変容してしまう前の初発の段階(連続欠席2~3日の段階)に関わるというのが本書の提案する不登校予防の大原則である。これはこの機を逃すことで、「学校に行くのが当たり前のからだ」から「家で怠惰に過ごすのが当たり前のからだ」へと変容してしまうことになるからと述べている。第3・4章でこの辺りについて教師や保護者等の関係者が取るべき支援策について極めて具体的に記している。特に、認知行動療法を用いて、行動に働き掛けて「からだの変容」を食い止める手法は大変参考になる。
 そして、第5章以下を読み進めていく中で、「学校がするべきことは、子どもたちの学びの機会を奪わないこと」に気付かされる。「個別最適な学び」は学力獲得だけでなく、自己決定や自己選択を全ての教育活動の中にできる限り取り入れていくことであり、不登校対策に大きく寄与するものである。
(1760円 図書文化社)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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