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戦後箕面教育史

12面記事

書評

戦後箕面教育史編集委員会 編
指導要録「開示」はじめ独自の歩み

 本書は、大阪府内有数の教育文化都市として発展してきた箕面市の教育にゆかりのある退職教職員有志が、戦後の同市教育の歴史を掘り起こし編集したもの。執筆者は元校長を中心に30人。資料提供・協力者は60人を超え、血の通った体験史の集成でもある。
 書名にもあるように、本書のテーマは「戦後箕面の教育史」であり、中心は箕面という地方の教育の戦後史だが、国や大阪府、組合、国際機関等の影響を受けつつも、独自の歩みを遂げた歴史の足跡を浮かび上がらせている。内容は、教育実践、教育課程、教師教育、教育行政、教育制度、教育運動など教育の各分野の歴史に及び、行間から関係者の苦心や努力の跡、エピソードがうかがえる。
 地方からの教育改革として、とりわけ箕面の教育が全国的に注目されたのは、わが国で最初の指導要録の「開示」を行い、日本の教育情報の開示に大きな影響を与えたこと。これを機に、個人情報開示の流れが浸透し、「情報開示に耐えられる指導要録」「子どものよさを評価する指導要録」という考えが広がった。そして国の指導要録改訂で「総合所見」欄が設けられ、個性や生きる力育成の参考になる文章記述が創設され、子どもの長所を前面に押し出していくようになった。
 本書は学校教育が中心だが、一つのケースワークとして、日本全体の戦後教育80年弱の歩みを俯瞰する上でも貴重である。
(2000円 戦後箕面教育史編集委員会・発行)
(規)

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