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高校の新指導要領、新科目に対応、共通テストも見据えた授業提案 第9回夏の教育セミナー報告

8面記事

Topics

明日からの指導のヒントに

 日本教育新聞社と、東進ハイスクールを運営するナガセによる第9回の「夏の教育セミナー」が8月10日から31日までオンラインで開かれた。本年度から始まった高校の新科目などの授業づくりと学習評価について、豊富な実践報告が行われ、明日からの指導に役立つ授業改善のヒントが示された。基調講演は文科省の平野博紀・大学入試室長と矢幅清司・初等中等教育局視学官が行った。大学入試改革の最新動向や、指導と評価の一体化の視点から見直す授業づくりについて語った。

基調講演
研究活動を組み込んだ入試も
平野 博紀 文科省高等教育局大学振興課大学入試室長

 文科省の平野博紀・大学入試室長は、高大接続改革の現状や来年の入学者選抜などについて講演した。学力の3要素を多面的に評価しようとする選抜の導入について、試験の中に受験生の研究活動を組み込んだお茶の水女子大学の総合型選抜(新フンボルト入試)などの事例を紹介。受験生の課題発見能力を評価できるだけでなく、受験者同士に連帯感が生まれ、不合格者の一般選抜への出願にもつながっている、とする大学側の声を伝えた。
 来年の入学者選抜については、新型コロナウイルス対策に伴い、共通テストの追試験の会場設定を今年秋ごろに判断すると述べた。昨年度は47都道府県に設置している。各大学の個別選抜に対しては、調査書で、オンラインを活用した特例授業の参加日数などの記載の有無により、受験生に不利益が出ないように扱うことなどを求めた、と説明。また、今年の共通テストで不正行為が発覚したことから、各大学の判断で警察に被害届を出す場合があると周知することや、試験前にスマートフォンの電源を切らせ、かばんにしまうよう指導することなどを話した。
 新学習指導要領の内容を踏まえた令和7年度大学入学共通テストの実施概要についても、既に公表している試験時間の変更や科目の追加などを話した。新科目の「情報I」について、既卒者には、旧科目の内容に基づく経過措置問題を出題する方針であることなどを説明した。
 平野室長には、事前に質問も寄せられた。共通テストの出題内容に関する質問には「入試センターが公表している問題作成方針を改めて確認してほしい」などと答えた。

基調講演
指導と評価 一体化で授業改善を
矢幅 清司 文科省初等中等教育局視学官

 本年度から学年進行で始まった新学習指導要領と、それに応じた学習評価。文科省の矢幅清司・初等中等教育局視学官は、指導と評価の一体化による授業改善のヒントを提案した。
 今回の学習指導要領で明確化された指導と評価の一体化とは何か―。矢幅氏は、中央教育審議会委員の市川伸一・東京大学名誉教授の「指導したことをきちんと評価する。評価したことを指導にも生かすということだ」という言葉を引用しながら、学習評価を児童・生徒の学習改善や教員の指導改善につながるものにすることが重要だと語った。
 「指導と評価の一体化」に向けては小・中学校と同様、高校でも観点別評価が本格的に導入された。文科省は今回の改訂に合わせて指導要録の参考様式を変更し、本年度から全ての高校で3観点による学習評価に取り組んでいる。講演では観点ごとに、評価のポイントや工夫の例を示した。
 学習指導要領で示された、育成すべき資質・能力の中でも、評価が難しいとされているのが、「学びに向かう力、人間性等」の評価だ。矢幅氏はこの中には「主体的に学習に取り組む態度」として観点別に評価できる部分と、評価にはなじまない「感性や思いやり」の部分があると指摘。学習評価に当たっては、それぞれを整理することを求めた。観点ごとにテスト問題と評価規準の例も紹介した。
 高校の学習評価を支援するため、国立教育政策研究所などがハンドブックを作成している。矢幅氏は教職員支援機構のオンライン講座などとともに授業づくりの参考にするよう呼び掛けた。

英語
「教える」ではなく「支援」を
山本 崇雄 横浜創英中学・高校(横浜市)校長補佐・新渡戸文化学園ラーニングディレクター他

 山本崇雄・横浜創英中学・高校校長補佐は、令和7年度以降の入試に向けた授業の組み立て方と評価の在り方について語り、どのように入試が変化しても、それに対応できる生徒を育てていくことの重要性を指摘した。過去の勤務校での英語の授業を動画も交えて紹介し、生徒が「コミュニケーション英語」のリーディング教材を自分たちで用意したり、入試問題に関わる情報交換を行ったりしている様子を伝えた。
 山本校長補佐が大事にしてきたのは「教えない授業」。「勉強しなさい」という言葉を使わないことから始め、教員は「教える」のではなく「支援する」、「一人で学ぶ」を「協働して学ぶ」形式に変えるなどしてきた。社会全体が大きく変化する中、自ら考え、判断し、行動する力が必要になると考えたためだ。
 最後に「学びは巨大なジグソーパズル」であるとし、学びのピースが増えれば物事の関連や全体像が見えるようになり、やがてそれが自分たち自身で社会を創ることに直結すると強調。学校での学びと社会のつながりを認識できる授業づくりの必要性を語り掛けた。

英語
生物や古典との教科横断で
土屋 進一 西武学園文理高校教諭

 「教科横断的な視点に立った新たな授業実践」をテーマに講演した土屋進一・西武学園文理高校教諭。これまで他教科の教員と連携し、教科横断的な授業を行い、生徒の「分かった」「つながった」という発見を促してきた。
 講演では視聴者に向けて三つの体験授業を実施。1本目は英語×生物、2本目は英語×数学、3本目は英語×古典で、生徒の学びや気付きを追体験できるようにした。最後に教科横断型授業の五つの視点を提案した。
 最初の英語×生物の授業では、授業でミドリムシの特性などを学んだ後、英語でプレゼンをする課題を設定。内容はミドリムシなどの生物を使った健康食品メーカーの社員になったつもりで、自社の製品を世界に売り込むものだ。生徒はこの内容を撮影し、1分間の動画にまとめて提出。今回のセミナーでは、この動画と生徒へのインタビューを紹介した。
 最後に教科横断型授業の長所として、言語習得に必要な「スキーマ」(概念)を意識的に獲得させることにつながり、外国語学習の効率化にも役立つと指摘した。

数学
振り返りの場面設定など鍵
鶴迫 貴司 東山中学・高校教諭

 鶴迫貴司・東山中学・高校教諭の講演テーマは「新学習指導要領に沿う授業のヒント」。本年度全面実施された新学習指導要領に触れるとともに、「令和5年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」に示された、「『どのように学ぶか』を踏まえた問題の場面設定」に焦点を当てて話を進めた。
 最初に「単元や題材など内容や時間のまとまりの中で、学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか」「生徒にとっては『学習の方法』、教師にとっては『指導の方法』に関して『数学的活動』を実践すること」など新学習指導要領に沿う授業を実施するために重要な点を説明。その上で、数学教育の意義の観点から「数学的活動」を明らかにし、「中学校との接続に配慮」「すべての生徒の数学的に考える資質・能力の基礎を培う」「科目の内容と系統性の考慮」の3点を主軸に「数学I」の性格と内容を取り上げた。
 授業の構築および展開に関する実践例では、重要な点や主軸に沿って出題した8問の問題を基に、具体的な授業内容や評価の仕方などを紹介した。

数学
気付き・アウトプットを重視
酒井 淳平 立命館宇治中学校・高校教諭

 「今こそ大切な授業研究」をテーマに話をした立命館宇治中学校・高校の酒井淳平教諭。「数学の授業を通して育てたい力」を説明し、共通テストでは「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力・表現力」を意識的に問おうとしており、それは教員が数学教育で取り組みたかったことを実現するチャンスであることを強調した。
 学習指導要領から導かれる「授業改善が大事」という結論を踏まえて、重要な点として示したのは「生徒の学び方という視点で授業を見直すこと」。難化したといわれる今年の共通テストを「実は出題方針通りだった」と分析し、「求められる生徒の思考力、数学的に考える資質・能力がどうすれば育つか」を考えると「より良い授業を探究すること」こそが重要とした。
 そこから、自身が参加する授業研究の内容を紹介。授業改善のポイントを「落とし穴に気付く」「『生徒に疑問や気付きがあるか』『生徒はアウトプットしているか』『生徒が頭を使っているか』の三つの視点で点検する」と挙げた。そして「大事なのは数学的に考える力を育てること」と訴えた。

国語
自己紹介で対話の仕方練習
河口 竜行 渋谷教育学園渋谷中学高校教諭

 渋谷教育学園渋谷中学高校の河口竜行教諭は、国語の対話型授業のつくり方を中心に講演し「国語でこそ対話的な授業をすることで、他教科へ波及する」などと話した。
 河口教諭は、対話型授業を進めるにはまず、生徒たちが「対話の仕方」を身に付ける必要があるとし、その練習方法として最初は誰でも話しやすい自己紹介を勧めた。練習では、

 ・話しやすいテーマを設定する
 ・相手が言うことを評価も否定もせず、安心・安全な場をつくる
 ・うなずき、相づちで傾聴する
 ・感想を伝える時間をつくる

 ―ことを意識するよう提案した。
 対話型授業をする際は、教員の指示でつくったペアで話すことから始め、その後は確認したいことや発問への答えもペアで行う。教員の心構えとしては「生徒が楽しく参加していることを優先する。話していない生徒がいたとしても、考えている場合があり、みんなが同じように話している必要はない」と語った。
 講演の最後に、子どもの主体性はもともと十分あるとし、教員はゆとりを持って待つことが重要だと訴えた。

国語
答えのない問い 投げ掛けて
齋藤 祐 中央大学附属中学校・高校教諭

 中央大学附属中学校・高校の齋藤祐教諭は国語科の授業を通じて、自分で問いを生み出せる生徒、学び続ける生徒を育てることを目標にしてきた。問いを立てるためには、問い方を知る必要があり、そこに教員の働き掛けの余地があるという。問いは、答えが用意されていない、葛藤をもたらすものがよく、国語科の例として「『こころ』(夏目漱石)で、先生はなぜ自ら命を絶ったのか」などを挙げた。
 齋藤教諭が「現代の国語」の実践で取り上げたのは、メディアリテラシーについて扱った「メディアと現代社会の課題」の単元。文学作品の『藪の中』(芥川龍之介)や、うずくまっている少女とその少女を狙っているように見えるハゲワシが映る「ハゲワシと少女」の写真を使って事実と真実の違いなどについて考えを深めたという。
 期末試験では、「真実」とはどのようなものかについて、文章の流れを付箋で整理する思考ツールを使って小論文を書かせた。
 学習評価についても触れた。評価は本来、「生徒への励まし」とし、個々の生徒の実態をつかんで、国語の力を伸ばすことを呼び掛けた。

化学
時間かけず実験、考察を長く
田中 義靖 東京都立多摩科学技術高校指導教諭

 田中義靖・東京都立多摩科学技術高校指導教諭は、今回の学習指導要領改訂で導入された観点別評価に基づいて授業を行う際、「思考」が特に重要になると指摘。生徒の「思考」を促す授業を多く紹介した。
 この中には、濃度の異なる食塩水を生徒に与え、どちらが濃いかを調べる方法を考えて実験させるといったものがあった。解答としては、同じ体積の食塩水から水分を取り除き、残った食塩の質量を比べる、同じ体積の食塩水の質量を比べるといった実験例を示した。塩分を沈殿させる試薬(硝酸銀水溶液)を使って、沈殿物の量を比べる実験例も挙げた。
 この実験では濃度が高いほど、溶液が濁るが、最も濃度が高くなった飽和食塩水で試すと、透明になる。その理由を考えさせるとよいとした。
 田中氏は準備と片付けを含めて20分かからないような実験方法を著書でまとめている。その一端について語った上で、時間のかからない実験を導入することで、生徒が考察する時間を長く確保できるなどと話した。

歴史総合
答え求めず、考える手法伝授
奥村 暁 神戸大学附属中等教育学校教諭

 新科目「歴史総合」を担当した神戸大学附属中等教育学校の奥村暁教諭は、授業設計におけるカリキュラム・マネジメントのコツや学習評価の方法などを解説した。
 奥村教諭は授業の計画に当たって、年間を通して軸となるテーマを設定し、生徒が身に付けるべき資質・能力をその単元に割り振る。また、単元内にも小テーマを設け、それに沿った問いや主題学習を設定しているという。
 「歴史的資料の読解」を例に挙げ、批判的分析について、知る→実践する→検証する→応用する、といった力を各単元の目標にした。
 学習評価については、活動ごとに評価をするのは難しいとし、単元の最初と最後で生徒がどう変わったかを、提出物などの蓄積から各観点で判断するべきだとした。主体的に学びに向かう態度の評価では特に重要だ、と強調した。
 アクティブ・ラーニング型の授業を展開するためには、生徒に答えを求めないことが重要だという。教員は、生徒を用意した答えに導くのではなく、考えるための手法を教え、生徒と一緒に考えることが求められるとした。

地理総合
人口問題を考察、班で深掘り
糟谷 武志 武蔵野大学中学校・高校教諭

 新科目「地理総合」の授業づくりについて話したのは武蔵野大学中学校・高校の糟谷武志教諭。令和7年度以降の大学入学共通テストの出題傾向を見据え、探究的な学びに取り組む授業を提案した。
 「人口問題」を題材にした授業では、最初に、世界の人口の推移や、人口増加の要因、発展途上国と先進国の人口の特徴について、特定の内容を強調した地図や人口ピラミッドを使って説明。
 その後、これまでの学習内容を踏まえ、生徒が好きな国を選び、なぜ現在のような人口ピラミッドの形をしているのか、人口増加率がどうなっているかなどを考察した。
 班ごとの発表では、班員たちが調べた国の中から一つ選び、さらに深掘りした。歴史的背景を調べたり、人口問題の解決策を考えたりして、クラスで発表した。
 単元の最初に示した目標や単元を貫く問いを、単元の最後に生徒へ改めて提示。生徒は目標達成率や新たに学んだこと、今後深めたいことなどをワークシートに記入し、提出した。

公共
「切り返し発問」議論で重要
山本 智也 筑波大学附属駒場中・高校教諭

 学習指導要領の改訂により、公民科で新たに必修科目となった「公共」。今後の大学入試で「思考力」を問う出題の重みが増す中、筑波大学附属駒場中・高校の山本智也教諭は、公共での思考力について「概念や理論への抽象的な理解を日常生活や現実社会の課題に活用し、討論や発表に生かすこと」だと話した。
 生徒の思考力を鍛える授業づくりのポイントとして、山本教諭は写真やグラフ、新聞記事、SNSの投稿などを活用した「具体化する」「現実性と学ぶ意味を感じさせる」「議論に誘う」教材を紹介。議論を通して学びを深めるため、教員が生徒の発言に対し、言い換えや根拠の提示などを促す「切り返し発問」の重要性を強調した。評価の際には、授業で扱った概念や理論を題材に思考力・判断力・表現力を問う試験問題を作ったり、評価規準を示した上で学習評価したりする例を挙げた。
 インターネット上に分かりやすい学習コンテンツがあふれる中、学校の授業では「教員も生徒も問い、共に考え、議論する授業に取り組んでいきたい」と語った。

探究
内容や発表、複数の目で評価
渡部 敦 宮城県仙台第三高校教諭 SSH―授業づくり研究センター長(講演者)・村田 淳 宮城県仙台第三高校教諭 SSH担当(共同研究者)

 理数科と普通科を置く宮城県仙台第三高校の渡部敦教諭は、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)事業で培った課題研究の取り組みと生徒の進学の傾向を、豊富な資料を基に紹介した。探究学習の評価方法なども確認できる内容となった。
 これまでの成果の振り返りでは、同事業の一環で取り組んだ理数科の課題研究の取り組みを報告した。ポスターや口頭による発表の場を多く設ける「学習サイクルモデル」が現在の探究活動につながっているとした。実践の成果として、国立大学の推薦合格者が平成22年度から昨年度までで約100人増えたことをグラフで示しながら報告した。
 課題研究では、取り組みの内容に加え、発表の様子も評価する。生徒本人、教員、他の生徒が評価することで、客観性を高めることが狙いだという。
 渡部教諭は生徒の自己評価グラフを示しながら、「さまざまな視点で評価されることで、新しい気付きを得る。目標も高くなり、探究に深みが出るようになる」と述べた。

探究
関心・夢を社会貢献へつなぐ
木村 健太 広尾学園中学校・高校医進・サイエンスコース統括長

 広尾学園中学校・高校の木村健太教諭は「総合的な探究の時間」について、探究の入り口となる研究テーマの設定方法を中心に講演した。
 研究テーマを決めるに当たっては、社会的に求められているか、生徒の関心や夢、実現性の有無の三つを意識させているという。また、新規性を出すためにも、先行研究の調査を怠らないように強調している。研究に取り組ませる上で、研究テーマ決めの参考にしてもらおうと、京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞に関する論文などを紹介。ヒアルロン酸を使用したがん細胞の増殖抑制について研究テーマとする生徒もいた。木村教諭は「自分のやりたいことを通して社会に貢献することを教えることが大切だ」と述べた。
 探究の授業での教員の役割についても触れた。生徒の研究を支える三つの役割として、「生徒と一緒に考える」「研究に取り組む環境をつくる」「視点や考え方を伝える」―を挙げた。木村教諭は「探究を進めるには、教員も生徒も楽しむことが大切。楽しければ生徒も自分で興味・関心を深めていくもの」と強調した。

情報
プログラミング ウェブ上の教材活用も
中野 由章 工学院大学附属中学校・高校校長

 教科「情報」は令和7年度共通テストから出題科目に加わり、国立大学協会も一次試験で必須とすることを決めている。中野由章・工学院大学附属中学校・高校校長は「他教科・科目での活用を含め、学びの基盤となる『スタディスキルズ』の要素が非常に強い。学校教育をひっくるめて取り組んでいくことが大事になる」と指摘した。
 必修科目となった「情報I」について、中野校長は教科書に掲載されているプログラミング言語のシェアや学習内容の4分野のページ比率を示しながら解説した。
 授業で活用できるウェブ上のプログラミング教材も取り上げた。ピクトグラム(絵文字)を動かす「ピクトグラミング」、プログラミング言語の「Python」やフローチャートを活用した「PyPEN」を実演しながら紹介した。
 政府のGIGAスクール構想を受け、高校でも整備が進んでいる1人1台の情報端末にも触れた。「自宅で授業の続きができる意義は大きい。さまざまな制限を設けている学校もあるが、スマートフォンより使いたくなる運用が必要だ」と話した。

英語
積極的な発話を評価、点数化
安河内 哲也 東進ハイスクール東進衛星予備校講師

 安河内哲也・東進ハイスクール・東進衛星予備校講師は「Active English Program」(AEP)の取り組みを中心に紹介した。「学校英語教育改革プログラム」とも呼ばれ、自身の立ち上げた実用英語推進機構の一事業。4技能重視の新学習指導要領を踏まえ、授業改善で参考にしたい内容が満載だった。
 例えば、「音声を用いた授業と評価」は「AEP」の取り組みのポイントの一つ。安河内氏の説明の中で注目すべきは、4技能対応型の評価の取り組みだった。スピーキングの評価は難しく、学校現場の興味・関心は高い。「AEP」では専用パスポートを配り、授業中の積極的な発話を評価して、はんこを押している。1はんこで1点扱い。それを定期テスト(100点満点)の25点分に充てているという。
 この他、ICT活用や人材育成、来るべきAI時代の英語学習など、学校現場の抱える課題に関する話題を多く取り上げた。
 安河内氏は「教師の学ぶ姿勢を生徒たちは見ている。教師も学び、共に頑張ってほしい」とエールを送った。

小論文・推薦入試
オリジナリティー・教養・学問的資質 合格への3要素に
正司 光範 東進ハイスクール・東進衛星予備校・早稲田塾講師

 正司光範・東進ハイスクール・東進衛星予備校・早稲田塾講師は、指導の鍵として「生徒の主体性を育むこと」を挙げた。多くの生徒を難関大合格に導いた実績から、「合格につながる要素には『オリジナリティー』『教養』『学問的資質』の三つがある」と述べた。
 難関大でも定員数が増加傾向にある推薦入試。まずは書類審査で必要な志望理由書の作成方法に注目が集まる。しかし、教師がその指導を熱心に重ねるほど、不合格になりやすい矛盾について説明した。要因の一つは、教師の言っていることだけを再現しようとしてしまう生徒側の受動的態度。それが問題となるのは書類審査後の面接で、質問に答えづらくなってしまう点などを挙げた。
 また、大学が求めている資質(科学的思考力やリーガルマインドなど)を育む重要性も指摘。日常的なトレーニング方法として、「写経」(新聞社説の書き写し)や「主体的な読書」などを紹介した。それらに加え、過去に出題された小論文の問題に取り組むことで「学問的センスも身に付いていく」などと述べた。

志を育む特別講座
第一線の研究者・企業人から刺激

 本物との出会いで高校生の志を育む、東進の特別講座も限定公開された。
 神経科学と薬理学が専門の東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授は「脳が秘める力」をテーマに記憶のメカニズムなどを講演。SkyDriveの福澤知浩代表取締役は「空飛ぶクルマ」の開発への挑戦を語った。

参加者の声
生徒の意欲の大切さ理解
思考の引き出し方が具体的

【基調講演】
 最後に事前質問が紹介されていたが、どの質問も日頃より職員室でたびたび話題に上っているものばかりだった。紹介のあった資料を、早速読んでみようと思った。(大分県・数学科)

【探究】
 生徒の意欲を大切にするという点と、スペシャリストのチーム戦という点が特に印象に残った。生徒がいかに意欲的に取り組めるかという点を、もう一度考え直していきたい。(滋賀県・地歴科)

【英語】
 教科横断教育は新学習指導要領の柱であり、その比重は増していくものと思われる。英語教育と他教科を結び付けた今回の授業は非常に刺激となった。(東京都・英語科)

【理科】
 「生徒の思考を引き出す」方法が具体的に示され、分かりやすい内容だった。(神奈川県・理科)

 ※今後も高校の先生方に役立つセミナーを企画していく予定です。

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