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情報モラル教育とは?取り組みの内容やポイントを解説  

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特集 教員の知恵袋

 情報社会のいま、パソコンやスマートフォンから、誰もがインターネット上のさまざまな情報に簡単にアクセスできるようになっています。

 それによって懸念されるのが、子どもたちがインターネット上で危険に巻き込まれる可能性です。今回は、今後さらに重要性を増すと考えられる情報モラル教育について詳しく解説します。

情報モラル教育とは

 情報モラル教育とは、小学校・中学校・高等学校の児童・生徒を対象に、各教科における指導を通して、“情報モラル”を身につけさせる取り組みのことです。

 情報モラルは、“情報社会において、適正な活動を行うための基となる考え方と態度”を指します。

情報モラルの具体例
・人権・知的財産権などの権利を尊重して情報社会での行動に責任を持つこと
・情報を正しく安全に利用できること
・情報機器の使用による健康とのかかわりを理解すること

出典:文部科学省『「教育の情報化に関する手引」検討案 第5章 情報モラル教育』『情報モラル教育について』/文部科学省国立教育政策研究所『情報モラル教育実践ガイダンス

情報モラル教育が必要とされる背景

 情報モラル教育が必要とされる背景にあるのは、児童・生徒を取り巻く環境の変化です。

 2010年前後から、スマートフォンやタブレットを使ったSNSの利用が子どもたちの間にも急速に普及して、インターネットの利用が長時間化しています。パソコンやスマートフォンなどは、生活を便利にしてくれるデバイスです。

 一方、使い方を誤れば、非常に危険なツールになる可能性もあります。実際にコミュニティサイト等における被害数や、SNSに起因する被害児童・生徒数は増加傾向にあります。

 だからこそ、児童・生徒に情報モラルを身につけさせることが、より一層重要になってきているといえます。

出典:文部科学省『「教育の情報化に関する手引」検討案 第5章 情報モラル教育』『情報モラル教育について

情報モラル教育の内容と4つのステップ

 情報モラル教育で指導する内容は2つの領域、5つの分野に分けられます。また、指導を行う際には、それらを4つのステップに分けて進めます。

 ここからは、情報モラル教育の内容と4つのステップを紹介します。

情報モラル教育の内容

 情報モラル教育の5つの分野は、学校の教育活動全般を通して行います。指導を行う際は、5つ・生徒の知識や心の発達段階、理解の度合いに合わせて適切に行うことが重要です。

情報モラル教育の5つの分野
1.情報社会の倫理
情報に関する自他の権利を尊重して、責任を持って行動する態度
2.法の理解と遵守
情報社会におけるルールやマナー、法律があることを理解して、守ろうとする態度
3.公共的なネットワーク社会の構築
情報社会の一員としての意識を持って、適切な判断や行動を取る態度
4.安全への知恵
情報社会の危険を予測して、被害を予防する知識や態度
5.情報セキュリティ
生活で必要な情報セキュリティの考え方、情報セキュリティを確保するための対策・対応についての知識

出典:文部科学省『「教育の情報化に関する手引」検討案 第5章 情報モラル教育』/文部科学省国立教育政策研究所『情報モラル教育実践ガイダンス

情報モラル教育の4ステップ

 情報モラル教育は、特定の教科において進めるものではありません。指導を行う際は、情報モラル教育の必要性や目標などを確認したうえで、次の4ステップで進めます。

1.実態把握・整理
 文部科学省や教育委員会で実施しているアンケート結果を参考にしながら、児童・生徒の実態把握を行います。
2.年間指導計画の作成
 文部科学省が公開する『情報モラル指導モデルカリキュラム表』や『情報モラル指導カリキュラムチェックリスト』を活用して、2領域5分野の系統的な指導計画の作成・見直しを行います。
3.指導方法の検討
 『情報モラル教育実践ガイダンス』で示される“情報モラル教育指導例”を参考に、統計資料やインターネット上の教材を使用した具体的な指導方法を検討します。たとえば、2022年に文部科学省が作成した『情報モラル学習サイト』を教材として利用するのも一つの方法です。
4.指導・評価
 指導後、授業の振り返りや児童・生徒の感想文などを参考に、指導方法や授業全体を評価して、今後の指導に活かします。

出典:文部科学省国立教育政策研究所『情報モラル教育実践ガイダンス』/文部科学省『情報化社会の新たな問題を考えるための教材 ~安全なインターネットの使い方を考える~

情報モラル教育のポイント

 情報モラル教育を進めるうえでは、指導者となる教員の指導力の向上が欠かせません。

 日頃から、児童・生徒が危険に巻き込まれる可能性があるWebサイトを確認したり、児童・生徒が実際に巻き込まれた事件を把握したり、情報収集を行うことが大切です。そのうえで、文部科学省が開催する情報モラル教育指導者向けのセミナーに参加するのも一つの方法です。

 また、児童・生徒の家庭や地域との連携を強化することも重要な要素といえます。3者間での連携を強化するためには、学校主催の勉強会や、教育委員会主催の研修会などを開催して、社会全体で子どもたちの指導にあたれるような体制を整えることが求められます。

出典:『情報モラル教育について

教育の情報化に欠かせない情報モラル教育

 教育のICT化が進むなか、児童・生徒一人ひとりが責任を持ち、安全に情報社会を生き抜くためには、情報モラル教育が必要不可欠といえます。

 また、児童・生徒が学校以外でインターネット・SNSを利用する機会が多いことを考慮して、社会全体が情報モラルの重要性や危険性を理解することも大切です。

 情報モラル教育を効率的に行うためには、教員の指導力の向上を図るとともに、学校からの一方的な指導にならないように、学校・家庭・地域が一体となって理解を深めることが求められます。

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