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「大学における教員養成」の日本的構造 「教育学部」をめぐる布置関係の展開

12面記事

書評

岩田 康之 著
近隣国との比較交え制度の課題検討

 「教職敬遠?免許の取得最少」。こんな見出しのニュースが新聞に出た。教員不足は周知の事実だが、中高の免許取得者まで減少しているとは深刻な事態だ。教員免許は教職課程のある大学などで単位を履修し、申請すると都道府県教委から授与される。中高の免許は「開放制」の拡大により多くの大学で取得可能だが、小学校免許は取得できる大学は中高ほど多くない。
 本書では、日本における教員養成の制度としての歴史的変遷と課題について述べている。東アジアの国々との比較も加えている。
 教育施策についても1980年代以降の人員削減や21世紀の抑制策撤廃後の「教育学者なき教育学部」の問題など未解決の課題を指摘する。その背景には「教育学」と「教員養成」の位置付けの不明確さがある。
 教員免許の「質保証」が求められているが、現状のシステムは劣化しているようだ。この点に関し、著者は「教職入職者の質の低下→現場での若手教員への期待値の低下→行政による管理強化→『開放制』原則下での教職離れ」という負のスパイラルも述べていて、まさに著者の指摘の通り教職離れが進行している。
 しかし制度の問題だけでなく、「GIGAスクール」など新たな学びの形やいじめ・不登校などさまざまな教育課題対応が求められる現在、カリキュラム自体もそれに対応しているのかという問題も残っている。
(3410円 学文社)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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