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「現代の国語」はなぜ嫌われるのか

16面記事

書評

高校国語の歴史研究と実態調査が示す新たな可能性
笠原 美保子 著
課題踏まえ新科目の在り方提案

 本年度から始まった高校新学習指導要領。必履修科目「現代の国語」は「話すこと・聞くこと」「書くこと」の指導が不十分などの課題から誕生した。また「読むこと」は文学作品の読解よりも「現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章」を重視する。扱う教材に関し「小説、物語、詩、短歌、俳句などの文学的な文章を除いた文章」(学習指導要領解説国語編)と念を押してもいる。
 こうした大前提がある中で、小説5編を掲載した「現代の国語」教科書が検定で認められたことが物議を醸し、教科用図書検定調査審議会、文科省が認めた経緯、考え方を示すまでに至ったことは記憶に新しい。
 第1章「『現代の国語』教科書に小説を載せてはいけないのか」、第2章「『現代の国語』の先輩たち」、第3章「『現代の国語』の課題と可能性」という構成は時宜を得ているだけでなく、古くて新しい課題に迫る。かつての著者の高校調査、インタビューから「話すこと・聞くこと」「書くこと」がなぜ現場で狙い通りに機能しないのかが、浮かび上がる。
 本書は、だから「嫌われる」と強調したいわけではない。むしろ、「現代の国語」を評価し、現場の意識に合わせながら、生徒に必要な力を付けるための在り方を提案することに軸足がある。この提案をどう受け止めるか。国語は教育活動の根幹。国語教員だけでなく、高校関係者にも、ぜひ読んでほしい。
(1980円 学而図書)
(矢)

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