日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

福島復興「ドリームプロジェクト」その後 「また会えたね!10年ぶりの100キロハイク」【第6回】

NEWS

論説・コラム

 東日本大震災が起こった翌年の夏、福島県内の小学校5、6年が2週間に渡って寝食を共にし、福島の復興に向けて仲間を作り、さまざまな経験を積んだ「なすかしドリームプロジェクト」から今夏で10年。この催しに参加した当時の小学生と運営スタッフが再び福島に集い、徹夜での100キロハイキングに臨んだ。再会を果たした「元小学生」は果たして歩ききれるのか。同行取材に基づき小説としてまとめる。

 「ブヨ」というのはやっかいな虫だ。地域によっては「ブト」などとも呼ぶらしいが、蚊と違って、刺された瞬間はほとんどわからず、羽音もあまり聞こえない。気付くと、皮膚ははれ、体液がしたたり、強烈なかゆみが襲ってくる。
 体質にもよるが、記者の場合は非常に相性が悪い。1年以上にもわたってかゆみが続くことが多い。
 そんなこともあってか、まっすぐに歩けないほどの眠気からは解放された。
 70キロほど、ほぼ一貫して舗装路を歩き続けてきたが、朝食を済ませると未舗装の林道が続く。そのせいか、足の裏の痛みもあまり気にならなくなってきた。
 10年前の小学生は4人中2人が歩き続けている。2人の男子学生は車中で休み、2人の女子学生が歩き続ける。歩き続ける2人も会話が戻ってきた。
 2人は、なるべく負担を減らそうと、リュックサックは同行する自動車に預け、荷物は何も持っていない。前日と変わって曇りがちな天気ではあるが、この先、道は険しくなり、自動車での同行は難しくなる。方向転換ができる地点まで先行してもらい、そこで、休憩・水分補給とする予定ではあった。林道を歩き、休憩地点に近づくが、車の姿はない。運転を担当するスタッフが休憩場所を見落としたらしい。
 コロナの問題がなければ、他人が口をつけたボトルから水分補給もできたが、今は、そうもいかない。山の中では携帯電話はつながらない。果たして、荷物を載せた自動車は狭い林道を戻ってこられるのか。戻ってくることにかけて、その場で待つことにする。

論説・コラム

連載