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福島復興「ドリームプロジェクト」その後 「また会えたね!10年ぶりの100キロハイク」【第9回】

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 東日本大震災が起こった翌年の夏、福島県内の小学校5、6年が2週間に渡って寝食を共にし、福島の復興に向けて仲間を作り、さまざまな経験を積んだ「なすかしドリームプロジェクト」から今夏で10年。この催しに参加した当時の小学生と運営スタッフが再び福島に集い、徹夜での100キロハイキングに臨んだ。再会を果たした「元小学生」は果たして歩ききれるのか。同行取材に基づき小説としてまとめる。

 ゴールまであと3キロほどとなった国道沿いの駐車場。福島県西郷村の大自然が一望できる。青空の下、10人以上で80キロ以上先の国立磐梯青少年交流の家から歩いてきた経路に思いをはせる。
 振り返ると、この100キロハイキングを企画し、学生たちと一緒に歩き続けてきた鈴本さんがあおむけになったまま動かない。160キロ以上のトレイルランニングを完走した経験もある小学校長。今も大会出場にむけてトレーニングを欠かさない。
 そんな鈴本さんもまた疲労していた。一睡もせず、10年前の学生たちと歩き続けてきた。時には交通量の多い道も歩く。疲労や睡眠不足で注意力が低下する中、危険から一行を守ろうと気が休まることはなかったのだろう。片足を別の足の上に乗せているのは、血流を変えるためだろうか。
 どうも眠っていたらしい。閉じていた目を開き、ゆっくりと立ち上がる。
 休める時には休むことも、このように長時間にわたる運動の際は重要な鍵となる。最後まで一行を見守り、歩き続けるための休養となったはずだ。
 この駐車場からは、一気に同行者が増える。自動車を降り、最後は、学生たちと一緒にゴールを目指す支援者たちが行列をなした。足の裏に水ぶくれができるなどした学生も戻ってきた。4人そろって歩く姿は久々のことだ。
 ひたすら登る3キロ。出発前に「意外ときつい」と聞かされていた。確かにきつい。
 最後のカーブを曲がると、那須甲子青少年の家が見えてくる。
 10年前に100キロを歩いた小学生は、この施設の中にタイムカプセルを埋めた。ゴール後の楽しみの一つはそれを掘り出して開封することだ。
 気がはやる学生たち。足取りが軽くなったようにも見える。
 敷地内に入ってからは横一列となり、手をつなぎ合う。笑顔のゴールとなった。
 4人の学生のうち、女性の2人が最後まで歩き切った。彼女たちもまた、足の裏を痛めていた。それでも頑張ったのだと夜の懇親会で語る。
 到着後、間もなく、タイムカプセルの掘り出しが始まる。何が出てくるのだろうか。

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