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教師の社会学 フランスにみる教職の現在とジェンダー

12面記事

書評

園山 大祐 監修・監訳
田川 千尋 監訳
京免 徹雄・小畑 理香 編著
日本の教師教育の課題も提示

 フランスの社会学研究者、心理学者の研究論文を「教職の変遷と現在」「教師とジェンダー」「教師の労働環境」のIII部18章に収めて構成した。日本とは教員養成の在り方や採用の仕方などの違いがある半面、「校外」での業務の多さ、教師の教えることに伴う困難さなど、わが国の教師が置かれた状況と似たような面もうかがえる。
 本書中には「仏日のジェンダーと教育研究からみた課題」(第II部第12章)や、終章「日仏比較からみえる教職の未来」などで日本の研究者がフランスの研究を踏まえながら、日本の教師教育の検討課題などを提示する論稿もあり、参考になる。
 「教師とジェンダー」については、女性教師が管理職の道を歩むことの険しさも浮き彫りにされている。だが、こうした性別役割分業的な刷り込みが自分たちの足元で行われているという研究、「教師の実践はどのようにして性別間不平等を作り出すか?」(第10章)を読むと、自分とは無縁だと考える教師にとっても、ドキリとさせられる授業場面に遭遇するのではないか。教員養成についても同様の課題を指摘する研究も読める。
 また、教師希望者が減少し、いかに増加に転じるかが課題になっている日本において、フランスの教師への転職、教師の退職事情も、「無縁」といえるだろうか。文化、風土の違いを超えて考えさせられる一冊である。
(5500円 勁草書房)
(矢)

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